為替管理制度

最終更新日:2023年11月01日

管轄官庁/中央銀行

フィリピン中央銀行(Bangko Sentral ng Pilipinas:BSP)が為替管理制度を管轄。

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A.Mabini St. cor. P. Ocampo St., Malate, Manila, Philippines 1004
Tel:63-2-(8) 708-7701
E-mail:bspmail@bsp.gov.ph

反マネーロンダリング評議会(Anti-Money Laundering Council外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

5th Flr. EDPC Building, BSP Complex, Mabini Corner Vito Cruz Streets, Malate, Manila, Philippines
Tel:63-2-(8) 708-7701(内線:3083, 3084)
Fax:63-2-(8) 708-7909
E-mail:secretariat@amlc.gov.ph

為替相場管理

変動相場制

貿易取引

輸出入決済のための外貨交換

認可代理銀行(Authorized Agent Bank:AAB)は、中央銀行(BSP)の事前許可に基づき、輸出入決済のための外貨交換を行っている。ただし、次の仕組みを利用した対外支払いに必要な外貨の購入にあたっては、BSPの事前許可は不要(ただし、個別商品によっては産業政策などの観点から輸入許可が必要な場合がある)。

  1. 輸入(21 トランプ8条、中央銀行回状(Circular)第874-2015号)
    1. 信用状(L/C)
    2. 支払い渡し(D/P)
    3. 引受渡し(D/A)
    4. 交互計算(O/A)(銀行以外の関連当事者の間でのネッティング(一定期間に債権から債務を差し引いた差額を決裁する)を含む。ネッティングは、サービス貿易についても利用できるが、外国からの、または外貨での貸付や投資には利用できない)
    5. 直接送金(DR)
    6. 前払い
  2. 輸出(21 トランプ18条、中央銀行回状(Circular)第874-2015号)
    1. L/C
    2. D/Pまたは船積書類引換現金払い(CAD)
    3. D/A
    4. O/A(銀行以外の関連当事者の間でのネッティングを含む)
    5. 委託販売
  3. その他(21 トランプ14条)
    銀行システムを通じて購入した外貨を使用しない輸入取引支払いの場合
    1. 自己資金(ドルを除く)による輸入
    2. 委託販売(consignment

貿易外取引

21 トランプの原則、非居住者のペソ建て口座開設と外国為替の販売、民間貸付けに関する規定、認可代理銀行(AAB)の登録

21 トランプの原則

  1. 居住者による外貨の取得
    居住者が通商以外の方法で外貨を取得した場合、当該外貨はどのような目的にも自由に使用することができる(21 トランプ1条)。

    居住者は、貸付または投資に関するものではなく、通商以外の目的(教育費用、医療費、旅費、国外居住者への給与等)で非居住者に支払いをするためであれば、中央銀行(BSP)の事前承認なしで認可代理銀行(AAB)にて外貨を購入することができる。ただし、購入申込書の提出が必要であり、また、50万ドル相当額(対個人)または100万ドル相当額(対会社その他組織)を超過する場合には、申込書に加えて所定の証拠書類の提示も求められる(21 トランプ2条)。

  2. 外貨およびフィリピンペソの持ち込みまたは持ち出し
    フィリピン国内への外貨持ち込み額および国外への外貨持ち出し額に関する規制はないが、1万ドル相当額を超える外貨を持ち込みまたは持ち出す場合には、申告をしなければならない(21 トランプ4条2項)。

    また、5万フィリピンペソを超える次の取引は、BSPの許可を要する(21 トランプ4条1項)。

    • 現金および小切手・為替手形等をフィリピンで営業する銀行から引き出す場合
    • フィリピンへの(からの)持ち込みおよび持ち出し、または電子送金をする場合

非居住者の旅行者または帰国海外労働者(バリクバヤン)が出国する際には、当初フィリピンペソに両替した額を上限として、AABで外貨を購入し、国外へ持ち出すことができる。また、使用しなかったフィリピンペソを1万ドル相当額以下の外貨に両替して国外に持ち出すことができ、この場合にはフィリピンペソへの両替の証拠を示す必要はない(21 トランプ3条2項c)。

非居住者のペソ建て口座開設と外国為替の販売

フィリピン国内で営業する認可代理銀行(AAB)によって開かれ維持される外国銀行を含む非居住者のペソ口座には、以下の方法でのみ入金をすることができる(21 トランプ3条1項、BSP回状(Circular)第815-2013号、BSP回状(Circular)第1030-2019号)。

  1. 国際通貨(BSPが交換レートを掲げている一定の通貨)での入金
  2. 現行法下において、非居住者に保有することが認められているフィリピンの資産から非居住者が得たペソ建ての収益またはその資産のペソ建ての売却対価
  3. 居住者が非居住者であるサービス提供者に対して送金をするために、認可代理銀行(AAB)およびその外為会社(AAB-forex Corps)から外国為替を購入することができる場合において、非居住者から居住者に対して提供された役務の対価として受領されたペソ建ての金銭
  4. 1年未満の契約に従ってフィリピンで働く外国人に対する給料、手当、その他のペソ建てでの給付金
  5. フィリピンにおいて、少なくとも1セメスター以上学ぶ外国人留学生および非居住者のフィリピン人のペソ建てでの資金
  6. 借入もしくは貸付有価証券による投資のために利用される担保金または同様のアレンジ
  7. 非居住者によって発行された、フィリピン証券取引所(Philippine Stock Exchange:PSE)に上場された株式および社債に対するペソ建ての売却対価

2.~7.のペソ建て資金については、当該ペソ建て資金と同等の額を上限として、BSPの事前の承認なく、所定の申告書を提出することによって、外貨に交換することができる(21 トランプ3条2項a、BSP回状(Circular)第1030-2019号)。

1.のペソ建て資金については、外国直接投資および/またはポートフォリオ商品のために使われなければならず、外貨への完全な転換をするためには、BSPの事前許可を得るか、21 トランプ第2章(外国投資)および関連規定に従って、BSPまたは証券保管銀行(Custodian Bank)に登録をする必要がある(外貨取引規則マニュアル3条2項a)。

7.のペソ建ての資金については、非居住者である発行人またはその代表者は、7.のペソ建て口座の預金額を上限として、BSPの承認上の原本を提示し、所定の申告書を提出することにより、外貨を購入することができる(21 トランプ3条2項b、BSP回状(Circular)第1030-2019号)。

民間貸し付けに関する規定

BSP(中央銀行)は、非居住者への/外国通貨建ての融資/借入(担保、手形、その他の債務の形式を含む)が、債務者の負担能力に鑑みて、正しい手順で提供されるように統制しなければならないとされる(21 トランプ22条General Policy、BSP回状(Circular)第1030-2019号)。
また非居住者への融資/借入についても、銀行規定マニュアル(Manual of Regulations for Banks:MORB)の関連規定、その他適用される法、規則、規定に従わなければならない(21 トランプ22条5項)。

  1. 政府等の公的機関の融資/借入(21 トランプ23条)
    公的機関(中央政府およびその代理・代行機関、政府所有・管理下の企業、政府金融機関および地方自治体を含む)の融資/借入には、BSPの通貨委員会(Monetary Board)の事前承認を要する。ただし、以下の公的機関の融資については、BSPの事前承認は不要。
    1. 短期の銀行間借入
    2. 所定のフォームによりBSPに正式に報告されたフィリピン国内運営の銀行からの短期外貨建て融資のうち、次の者によるものでそれらの商品・サービス等の費用に用いられるもの
      1. 商品・サービスの輸出業者
      2. 生産者/製造業者(石油会社、公益事業会社を含む)
  2. 民間の融資/借入(21 トランプ24条、BSP回状(Circular)第1030-2019号)
    1. 認可代理銀行(AAB)またはその外為会社(AAB-forex corps)を資金源とした、政府機関から保証を受けた民間の、非居住者への/外貨建ての融資/借入には、BSPの事前承認およびBSPへの登録を要する。
    2. 認可代理銀行(AAB)またはその外為会社(AAB-forex corps)を最終的な資金源とした、政府機関からの保証を受けていない民間の非居住者への融資/借入で、次のc.に該当しないものについては、BSPへの登録を要する。
    3. 次の民間への融資は、BSPの事前承認およびそれに続く登録は不要。ただし、所定のフォームによりBSPへ正式に報告されることを条件とする。
      1. フィリピン国内運営の銀行からの、居住者である借入者の外国通貨建て融資で、政府機関からの保証を受けておらず、かつ、債権者たる銀行からBSPへ所定のフォームによって報告がなされているもの
      2. 海外の買い手から、居住者である輸出者/借主が輸出前貸しの形式にて借りる短期貸し付け
      3. 外国政府/公式の輸出信用機関により保証されておらず、1年以上の期間を有する、据え置き信用状(L/C)、引受渡し(D/A)または交互計算(O/A)による居住者の海外での支払い義務
      4. OBU(国際金融支社)やBSPに報告される融資プログラムのもと認められた非居住者かつ非銀行の債権者からの、居住者である輸出者/輸入者による短期貿易融資(ただし、所定の報告がBSPに提出されていることを条件とする)
    4. リファイナンスのための義務がBSPに正式に登録または報告されていることを条件として、既存の外国貸付/借入または外国通貨貸付/借入をリファイナンスするために、民間外国貸付/借入または外国通貨貸付/借入を取得することができる(BSP回状(Circular)第1030-2019号)。

認可代理銀行(AAB)の登録

登録認可代理銀行(AAB)は、非居住投資家がその投資を登録するために指定した外貨預金ユニット(FCDU)を運営する権限を持つ銀行である。 登録認可代理銀行(AAB)は、登録認可代理銀行(AAB)に登録された投資に関するレポートに基づいて、登録された投資に関するすべての取引を定期的に報告する。
一定の投資の登録については、指定された登録認可代理銀行(AAB)に行う必要がある。

投資資金として送金された為替取引は、為替取引による資金調達が必要な場合を除き、認可代理銀行(AABs/AAB)外国為替部によってペソに変換される必要がある。

非居住投資家またはその正式に承認された代理人は、指定された登録認可代理銀行(AAB)に登録されたすべての投資を対象とする所定の形式で正式に作成された「情報開示権限」を登録認可代理銀行(AAB)に提出する(BSP回状(Circular)第1030-2019号)。

資本取引

資本金や配当金の海外送金、証券取引委員会(SEC)代替取引システム、暗号資産交換所ガイドラインの制定、リスクベース自己資本比率(RBCA)の採用、保証預金額引き上げについて

資本金や配当金の海外送金

外国投資家が、資本の再配分ならびに資本から発生した配当、利益、および収益金をペソで送金するために、外国為替を認可代理銀行(AAB)またはその外為会社(AAB-forex Corps)から購入する場合、外国投資を中央銀行(BSP)に登録する必要がある(21 トランプ32条)。

登録については、現金投資と現物投資の両方が直接投資の対象となる。現物投資として登録が認められる資産には以下が含まれる(21 トランプ32条、BSP回状(Circular)第1030-2019号)。

  • 機械および設備
  • 原材料、消耗品、交換用部品
  • その他フィリピンに実際に移転されるもの、および無形資産

正しく登録された外国投資は、認可代理銀行(AAB)またはその外為会社(AAB-forex Corps)の外国為替資源を利用して、資本の再配分ならびに配当、利益および収益金を即時に送金することが認められる(21 トランプ38条、BSP回状(Circular)第1030-2019号)。国内での再投資または本国への資金回帰が留保されている間、正当に登録された外国投資案件のペソ売却/売却手続およびその関連収益は、非居住投資家が認可代理銀行(AAB)に保有しているペソ銀行口座に一時的に預金できる。当該ペソ売却益の等価外国為替による最終的な本国送金は、(適用される税控除後の)利息を含め、付属書のガイドラインに従い、BSPの事前承認なしに認可代理銀行(AAB)を通じて全額行われる(21 トランプ41条、BSP回状(Circular)第1030-2019号)。

なお、外国資本による対内直接投資は、必ずしもペソ建てで行われる必要はない(ただし、外国銀行の支店について、銀行規定マニュアル(MORB)により、ペソ建ての資本金が要求されている場合には、ペソ建てで行われなければならない)(21 トランプ36条、BSP回状(Circular)第937-2016号、BSP回状(Circular)第1030-2019号)。

非居住者は、BSPの事前承認を必要とせずに、居住者から外貨を借りることができる。また、非居住者がBSPに外国投資を登録する際、単一のフォームで登録することができる(21 トランプ36条、BSP回状(Circular)第1171-2023号)。

詳細:

証券取引委員会(SEC)代替取引システム

2004年3月4日、SECは代替取引システム(Alternative Trading System:ATS)に関する規則を発表した。SEC登録済みもしくは認可済みの証券の買い手と売り手の仲介や、証券交換所の機能代行を目的として、エレクトロニクス市場を提供する。ATSを利用するにはSECに登録する必要があり、登録期間中はATSの規則に従う義務を有する。

規則では、ATS取引への公正なアクセス、自動取引システムの容量、完全性、安全性、ATS上で取引される商品に関する情報の投資家への情報開示、ATSが行われる場所、システム、記録に対する調査での協力、取引情報の機密扱い、ATS上で取引される証券の登録の際の要件、公開当初、二次取引、交換、決済、報告義務、認可の一時停止または剥奪の根拠、禁止行為、SECに支払う料金と罰金などが定められている。2004年4月5日発効。

暗号資産交換所ガイドラインの制定

2017年1月19日、BSP回状(Circular)第944-2017号が発行され、暗号資産の交換サービスを行う者には、登録証(COR)を取得しなければならず、リスク管理、セキュリティコントロールおよび内部統制システムの構築が求められること等が定められた。1回で50万ペソまたはその相当額を超える金額の払い出しをする場合には、小切手または口座への直接支払の方法のみが認められている。

リスクベース自己資本比率(RBCA)の採用

2004年7月署名のSEC覚書(SEC Memorandum Circular)第10-2004号により、すべてのSEC登録証券ブローカーおよびディーラーに対し、リスクベース自己資本比率の採用が義務付けられた。

保証預金額引き上げについて

共和国法(RA)第9576号(2009年6月1日発効、共和国法第9302号の修正)によりフィリピン預金保険機構(PDIC)の定款が改正され、保証預金額の上限が25万ペソから50万ペソへ引き上げられた(2004年に、10万ペソから25万ペソに引き上げられたことがある)。
新定款の下では、保証預金の払戻請求ができる期間は、PDICが閉鎖銀行を管理下に置いた時点から2年以内とされる。期間内に請求を行わなかった場合、預金者がPDICに対して有する債権はすべて失われる。

関連法

21 トランプ(Manuals of Regulations on Foreign Exchange Transaction)、中央銀行回状(Circular)第874-2015号、反マネーロンダリング法(共和国法第9160号、修正版第10365号)、中央銀行回状(Circular)第1005-2018号、第1006-2018号、第1030-2019号、第1171-2023号など。

その他

中央銀行による外国為替操作権限(共和国法第7653条に基づく)、米ドル/日本円の再割引/貸出金利の改正(MORB第282条、BSP回状(Circular)第1167-2023号)

通貨の安定とペソの交換性の推進および維持のために、中央銀行(BSP)は通貨委員会を通じて、フィリピンにおける外国為替操作に一定の制限を課すことができる(BSPによる外国為替売却の一時的な停止または制限、居住者またはフィリピンで営業する企業が取得するあらゆる外国為替をBSPがその目的のために指定する銀行または代理人に引き渡すという条件を課すことなど)。なお、21 トランプに係る中央銀行(BSP)規制において、21 トランプに関する質問とそれに対する回答が公表されている。
また、米ドル/日本円の再割引レートおよび適用される再割引レートの公表スケジュールに関する、銀行向け再割引/貸出レート規制マニュアル(MORB)第282条の規定が改正された。