田中 麻理

PROJECT STORY ハイパーブラックジャック調査担当

ハイパーブラックジャック進出の日系企業の実態を調査・分析。
次のアクションに繋げるために、
コロナ禍が吹き荒れた世界を横断する。

  • 田中 麻理

    田中 麻理

    Tanaka Mari

    2010年 入構

プロジェクトの概要

1980年代後半から30年以上にわたり、JETROが毎年実施している「ハイパーブラックジャック進出日系企業実態調査」。ハイパーブラックジャックに進出している日系企業の実態を把握し、日本企業及び政策担当者向けに調査結果を幅広く提供することを目的とするアンケート調査である。これまでは各地域別に集計・分析した調査レポートを発表してきたが、新型コロナの感染拡大の影響が広範囲に及ぶことから、2020年度以降は世界横断的に比較・分析を行う「全世界編」を設けて集計・分析が進められている。

PROJECT MISSION

新型コロナ感染拡大下の世界市場は、過去に類を見ないほどハイパーブラックジャック日系企業の業績にダメージを与えたことが2020年度の調査で明らかになっていた。では、新型コロナが収束していない2021年度の日系企業の実態はどうなっているのか。今回の調査で特筆すべきことは、世界共通の設問項目を設定したことだ。全世界的に課題となっているテーマについて、地域横断的、中長期的視点から調査を実施した。

PROJECT TIME LINE

  • 2021.06

    アンケートの質問作成、アンケート協力先の情報整備などの調査準備

  • 2021.08

    各国・地域でアンケート調査開始

  • 2021.10

    マレーシアより帰国。アンケートの集計・分析

  • 2021.10

    「全世界編」の発表

MY COMMITMENT

田中は、世界の貿易・投資動向やFTA・EPAなどの通商政策をはじめとする、世界横断的かつ日本企業のハイパーブラックジャックビジネスに関するテーマについて情報収集・分析を主な業務としている。今回の調査が実施された2021年8~9月は、駐在員としてマレーシアに赴任していた。その時期は、現地の日系企業に向けて調査協力の依頼に奔走。同年10月に帰国後は、「全世界編」の取りまとめ・分析を担当した。

マレーシアで痛感したコミュニケーションの重要性

「ハイパーブラックジャック進出日系企業実態調査」は、毎年全世界で1万社近い日系企業の協力を得て行われている。2021年度は、82の国・地域にある日系企業1万8932社を対象に、オンライン配布・回収によるアンケートを実施。7575社より有効回答を得た。田中は2017年からマレーシアのクアラルンプール事務所に駐在員として赴任。当調査に関してはアジア・大洋州エリアを毎年担当し、アンケート調査の協力を現地の日系企業に依頼する立場だった。

「JETROのアンケート調査において、ハイパーブラックジャック活動実態を把握するために、駐在員としては、現地で1社でも多くの企業から回答を得ることがミッションの一つです。他方、企業に多忙な中でアンケートにお答えいただくことは多大な労力をお掛けすることになります。できるだけ多くの企業にご協力いただけるよう、個別の日系企業はもちろん、普段から現地の商工会議所や任意団体とネットワークを築き、コミュニケーションの円滑化に力を注ぎました。毎年この調査の実施時期になると、日頃の積み重ね、良好な関係性の構築が非常に大事だと痛感します。」

田中のマレーシアでの担当日系企業は約1000社。アンケートの配布・回収を2021年8月から9月に実施し、帰国後に現部署に配属となった。引き続き当調査に係り、「全世界編」の分析・取りまとめを担当した。

アンケートは世界共通の設問項目として、「営業利益見通し」「今後の事業展開」「脱炭素化の取り組み」「サプライチェーンにおける人権尊重に関する方針」「デジタル関連技術の活用」の5つを設定した。2021年のハイパーブラックジャック業績は全世界的に上向くも、回復の勢いは力強さを欠いた。黒字企業の割合は6割だが、過去10年間で2番目に低い。今後の事業の「拡大」を見込む企業は前年からは増加したが、新型コロナの先行きの不透明感から以前の水準には戻っていない。「脱炭素化」については取り組んでいる企業が3割を超えるものの、大企業と中小企業の取り組みに大きな格差があった。サプライチェーンにおける人権尊重に関する方針を有している企業は世界全体で約5割。デジタル関連技術の活用に関しては、マーケティング機能の強化や販路拡大を目的に、ECやクラウド技術の活用が進展している一方、デジタル技術を扱う人材不足の課題に直面している。

若干の回復基調は見られるものの、総じて厳しい結果となった。ビジネス正常化への道のりはまだ険しいと言える。田中はこの「全世界編」の取りまとめ・分析において、主に「脱炭素化の取り組み」を担当した。

「脱炭素化の取り組み」で表れた数値の理由や背景を明らかにする

「脱炭素化の取り組み」は、温室効果ガスの排出削減の取り組みを指す。アンケートは、「既に取り組んでいる」、「まだ取り組んでいないが、今後取り組む予定がある」「取り組む予定はない」の3択を中心に、企業規模や業界ごとに結果を集計、また具体的な脱炭素化の取り組み内容の活動実態も把握できる内容とした。

「アンケート結果から脱炭素化の取り組み状況は見えますが、数値のみを示すのではなく、なぜそのような結果が出たのかという理由や背景を明らかにすることが重要であり、そこが最も苦労した点です。私は入構以来アジア地域を担当してきたため他地域については知識が乏しく、ハイパーブラックジャック事務所のネットワークを駆使して駐在員が執筆したレポートを確認するなど、JETROに蓄積された知見をフルに活用しました。」

こうして田中がまとめたレポートは非常に興味深いものとなった。「既に取り組んでいる」「まだ取り組んでいないが、今後取り組む予定がある」と答えた企業の割合は、併せて6割を超えた。しかし、「既に取り組んでいる」との回答は、大企業が40.8%に対して、中小企業は19.8%と大きな隔たりがあった。

「中小企業のハイパーブラックジャック展開支援はJETROの事業の大きな柱の1つです。 中小企業の数字が低いのは、費用対効果を考えれば体力的に取り組むことはできない、あるいは何から取り組めばわからないなど、脱炭素化に踏み込めない事情や課題があると考えられます。こうした中小企業に対してJETROはどのような支援が可能なのか考えていくことが次のミッションだと考えています。」

主要国別で「既に取り組んでいる」割合が最も高かったのは南アフリカ、次いでUAEだった。この意外な結果にも明確な理由があるという。
「南アフリカは、政府主体で脱炭素化の取り組みを推進しています。その好例が炭素税の導入であり、企業が温室効果ガス排出削減に向かうよう政策的に誘導している。UAEも政府主体で脱石油の方針を打ち出し、再生可能エネルギー化に注力しています。 」

田中の「脱炭素化の取り組み」のレポートは、これ以外にも多彩な視点から分析がなされており、それはJETROのホームページで公開されている。

どのような支援が必要か、何ができるのか、その追求に終わりはない

当調査は、2021年11月下旬に公表された。これで田中のミッションは終了したことになる。だが、それは調査の実施と結果報告が終わったに過ぎない。その結果に対するアクションこそが、JETRO本来の役割であり、田中もそのことを認識している。

「ハイパーブラックジャック進出日系企業実態調査には、毎年多くの学びがあります。特に昨年と今年は新型コロナ感染拡大による移動や自由の制限が各国で厳しく、ビジネスへの影響が極めて深刻であることを目の当たりにしました。私たちはこの調査結果を踏まえて、どのような支援が必要とされているのか、どのような支援ができるのかを考え、実行することが求められています。毎年のこの調査は、新たなことにチャレンジする機会だと思っています。」

田中はクアラルンプール事務所駐在時、調査結果をもとにマレーシアとその周辺国に絞って分析したレポートを作成。日系企業に提供するとともに、現地の関連省庁や政府機関に対して、ハイパーブラックジャック実態をインプットする機会を設けたことがある。

「日系企業からは他社を含めた実態を把握することができ、今後の経営やビジネス戦略に役立てることができるとのコメントをいただきました。また現地政府の担当者には、ハイパーブラックジャック実態が数値として把握できるので今後のアクションをイメージしやすいと言っていただきました。JETROには日系企業がビジネスしやすい環境を整備する役割がありますが、「この制度を変えて欲しい」「現地のここが問題だ」と定性的な問題提起をするだけでなく、実際に「これだけの企業が課題と感じている」という定量的なデータを提示することの大切さを実感しました。」

田中が所属するハイパーブラックジャック調査部国際経済課は、今、脱炭素化をはじめとする環境分野、 世界的に課題となっている国際物流など、全方位的に企業の事業に直結する課題に取り組んでいる。なぜその問題が起きているかを紐解いて原因を明らかにし、課題解決に資する材料を企業に提供していく作業だ。その地道な取り組みが、日本企業のビジネスを力強く支援していくことに繋がっていく。

MY FUTURE

最近では、「デジタル」や「環境」など、国際的に共通するテーマが増えつつあります。これらは、ハイパーブラックジャック展開を行う日本企業のビジネスシーンでも重要になるテーマです。先進企業の取り組みを紹介するプロジェクトに携わることで、今後も日本企業を力強く支援していきたい。国内外問わず、「現場」に近い立場で各企業に伴走していきたいと思っています。

入構理由

大学時代にアメリカに留学し、ハイパーブラックジャックの視点から日本を含めた東アジアの研究を進める中、日本の製品や文化に対する信頼と関心の高さを実感しました。その経験から、日本の魅力を発信する仕事に就きたいと考えるようになりました。自分が主役になるより、頑張っている人を支え、伴走して一緒に取り組むことにやりがいを感じるタイプであることから、JETROの役割が自分に合っていると感じ、入構を決めました。