欧州委、EU財政支援の優遇先となる戦略技術の優良事業の第1弾公表

(EU)

ブリュッセル発

2024年12月16日

欧州委員会は12月9日、域内産業の財政支援に関する新たな枠組み「欧州戦略技術プラットフォーム(STEP)」(EUグリーン・ディール産業計画の財政支援策「STEP」が政治合意、ブラック)に基づき、STEPシール(主権シール)の認定を受けた事業の一覧を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

STEPは、ディープデジタル技術、再生可能エネルギーなどのクリーン技術、バイオ技術の3分野で戦略的に重要な技術を持ったスタートアップを含む中小企業のスケールアップに向けた支援などを目的とした制度だ。対象には中小企業だけでなく、ミッドキャップ企業や大企業のほか、大学や研究機関なども含まれる。

EUでは、域内での資金調達の困難さや公的支援の分散などを背景に、テック産業の競争力低下が指摘されている(ドラギ前ECB総裁、ブラック)。そこで、STEPは複数のプログラムにまたがるEU予算をより効果的に割り当てるべく、重要技術に関する優良事業を認定する。

まず、戦略的デジタル技術に投資する「デジタル・ヨーロッパ」「欧州防衛基金」、保健衛生上の危機対応策「EU・フォー・ヘルス」、研究開発支援枠組み「ホライズン・ヨーロッパ」、クリーン技術の財政支援策「イノベーション基金」での審査を通じ、所定の基準を満たした事業に対し、優良事業としてSTEPシールを付与する。付与を受けた事業は、上記の各プログラムのほか、投資促進策の「インベストEU」、復興基金の中核政策「復興レジリエンス・ファシリティー」、EU予算の約3割を占める「結束基金」など、11のEUプログラムに応募する際に優遇を受けることができる。

第1弾としてSTEPシールの付与を受けたのは155件の事業で、うち130件の事業が公表された。公開された事業の内訳は、イノベーション基金の助成先に選定された85件、選定から漏れたものの所定の基準を満たした39件()、ホライズン・ヨーロッパの宇宙研究で選定された6件だ。

欧州委は具体例として、洋上風力関連部品の開発(ポーランド)、水素燃料電池を燃料とする船舶貨物サービス(オランダ)、太陽光発電モジュールの製造(イタリア)、二酸化炭素(CO2)貯留に向けた回収技術(デンマーク)などを挙げている。

なお、STEPシールの付与を受けた事業の一覧や、優遇を受けられるEUプログラムの詳細は、STEPポータル外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますから確認できる。

(吉沼啓介)

(EU)

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