マクロン大統領、新首相にバイルー氏を任命
(フランス)
パリ発
2024年12月17日
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は12月13日、中道政党「民主運動(MoDem)」のフランソワ・バイルー党首を首相に任命し、組閣するよう指示した。
バイルー氏は過去30年にわたり中道勢力を率いてきた実力者で、2017年の大統領選挙ではいち早くマクロン氏支持を打ち出し、当選を後押しした。マクロン大統領に強い口調で意見を言える数少ない政治家のひとりで、今回の首相任命についても、セバスチャン・ルコルニュ前軍事相の起用を決めていたマクロン大統領と同日に会談し、自ら大統領を説き伏せた、と報じられた。
バイルー氏は、同日行われたミシェル・バルニエ前首相との引き継ぎ式で、「私たちの前に立ちはだかるヒマラヤ山脈のような困難、あらゆる種類の困難を認識している」と述べ、この状況下では「和解こそが成功への唯一の道だ」とし、「和解に向け尽力する」決意を表明した。
バルニエ前内閣は、左派連合が提出した社会保障会計法成立を巡る不信任決議案に極右勢力が賛成票を投じたことで瓦解した(2024年12月6日記事参照)。バイルー新首相は極左政党「不服従のフランス(LFI)」と極右「国民連合(RN)」を除く左派、中道、右派の幅広い政治勢力から協力を取り付け、バルニエ内閣の総辞職で不成立となった2025年予算法を成立させることが優先課題となる。
バイルー氏指名を受けてLFIは同日、党のX(旧Twitter)で不信任決議案の提出を予告した。RNのジョルダン・バルデラ党首は同日、将来の政府に対する「事前の不信任」は考えていないとしつつ、「譲れない一線」は依然として存在し、2025年予算法で「薬の払い戻しの削減や、退職者の経済的・社会的状況を悪化させないこと」を強調した(現地ニュース専門テレビ局「BFMTV」、12月13日)。
他方、穏健左派「社会党」は、12月13日付で発表したバイルー新首相に宛てた手紙の中で、議会の採決を経ずに法案を成立させる憲法第49条第3項(49.3条)の発動を放棄するよう求めた。同党は、与党に加わらないとしつつも、バイルー首相がRNの排外主義的な政策を採用しないことを保証すれば、社会党の議員は不信任決議案に賛成票を投じない方針を示した(注)。
バイルー新首相は同日、バルニエ前内閣で内相を務めた「共和右派」のブリュノ・ルタイヨ氏と会談するなど閣僚人事に着手した、と報じられた。
(注)下院での社会党の議員数は66人。極左政党とその他の左派グループおよび極右勢力の議員が不信任案に投票しても、社会党議員の票がなければ過半数に満たず、不信任案は不成立となる。
(山崎あき)
(フランス)
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