フランス下院、内閣不信任案を可決

(フランス)

パリ発

2024年12月06日

フランスの下院(国民議会)は12月4日、ミシェル・バルニエ内閣に対する不信任決議案を賛成多数で可決した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、フランス語)。内閣不信任案が採択されるのは、1958年に始まった第5共和政下では、1962年以来となる。これを受けて、バルニエ首相は12月5日、憲法第50条に従い、エマニュエル・マクロン大統領に辞表を提出した。

下院では12月2日、2025年の社会保障会計法案の審議を巡り、少数与党のバルニエ内閣が議会の採決を経ずに法案を成立させる憲法第49条第3項(49.3条)を発動し、これに反発する左派連合および極右政党「国民連合」が内閣不信任決議案を提出した。

バルニエ首相は社会保障会計法案の成立を目指し、電力課税の引き上げや医薬品還付見直しの撤回など、国民の購買力擁護を主張する「国民連合」の要求に一部譲歩したが、同党を率いるマリーヌ・ルペン氏は同2日、自身のX(旧Twitter)で「バルニエ氏は国民連合を支持する1,100万人の有権者の要求に応えようとしなかった」と述べ、内閣不信任案を提出する意向を明らかにしていた。

国民の間でも、内閣不信任案を支持する声が強かった。11月29日に発表されたニュース専門チャンネルLCIの世論調査では、回答者の53%が2025年予算審議を巡るバルニエ内閣の不信任決議案を支持すると答えていた。特に極左「不服従のフランス(LFI)」の支持者(71%)と極右「国民連合」の支持者(59%)の間で不信任案に賛成すると回答した人の割合が多かった。

不信任案の可決により、上下院の両院協議会で調停案が策定されていた2025年の社会保障会計法案は不成立となった。現在、上院で審議中の2025年の予算法案も廃案になる可能性が高い。予算法案が2024年内に成立しない場合は「シャットダウン(公務員給与や債務利息の支払い停止)」のリスクを回避するため、2024年の予算を継続する「特別法」が制定されるものとみられる。

このため、当地エコノミストの間では今のところ、足元の経済が混乱することはないとの見方が優勢だ。民間投資銀行ナティクシスによる12月2日付の予測によれば、2024年の予算法がそのまま2025年に適用された場合、フランスの2025年の財政赤字はGDP比で5.3%となり、バルニエ内閣が策定した予算法案の5.0%に近い数字になると見通した。

(山崎あき)

(フランス)

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