スターマー英政権のAIへのアプローチ紹介、AI保証に関する報告書も公表

(英国)

ロンドン発

2024年12月05日

英国のマーガレット・ベリル・ジョーンズ政務次官(未来デジタル経済・オンライン安全担当)は11月21日、スイス・ジュネーブで開催されたWTOの人工知能(AI)会議(2024年12月4日記事参照)で基調講演を行った。

ジョーンズ氏は講演で、スターマー英政権のAIに関するアプローチを紹介し、経済成長やイノベーションの促進、公共サービス効率化の実現に向けたAIの活用方法を検討しているとした。その取り組みの一環として、テック起業家マット・クリフォード氏に対し、AI機会行動計画の策定を委託していることを紹介した。

また、ジョーンズ氏は2023年11月のAIセーフティーサミットの開催(2023年11月10日記事参照)やAI安全研究所(AISI)の設置など、AIの安全性に関する国際的な議論を英国が主導しているとし、今後最も強力なAIシステムを開発する一部の企業を対象とした規制を提案、開発企業側の不確実性を低減するとともに、社会的信用の強化やビジネスへの信頼を高めるとした。

また、AIスタンダードハブ(2022年1月18日記事参照)が、2025年3月にAIの安全性および国際的な相互運用性に資する技術標準に関するサミットを開催することも発表した。

一方で、AIの活用を進める企業に対する支援の必要性についても言及し、科学・イノベーション・技術省(DSIT)が11月6日に公表したAI保証(AI Assurance、注)市場に関する報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますについて紹介した。AI保証市場の成長に向けた政府の取り組みとして、次の4点を挙げた。

  • AI開発者向けのAI保証プラットフォームの開発
  • 2024年末までの第三者AI保証市場のロードマップの策定
  • AI保証に関する研究・開発・普及に向けたAISIとの連携
  • 責任あるAIに関する用語のツールの開発

なお、英国政府は11月19日、公益に資するAI技術を支援する「マンチェスタープライズ」の第2ラウンドの募集開始を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。エネルギーシステムの脱炭素化に資する技術を対象として、2030年までの実現・拡大に向けたロードマップを示すことなどを条件に、最大10のプロジェクトに10万ポンド(約1,900万円、1ポンド=約190円)相当を支援する。2025年1月17日まで受け付ける。

このほか、英国政府は11月25日にも、オックスフォード大学にAIの安全保障への影響を評価する研究室を設置することを発表している。

(注)AIシステムの信頼性に関して測定・評価を行うプロセス。

(ワルダ・ホリー)

(英国)

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