ウラン濃縮の米セントラス・エナジー、6,000万ドル投じテネシー州の遠心分離機製造施設を拡張
(米国)
アトランタ発
2024年11月27日
米国の原子力発電産業向けに核燃料や関連サービスを提供するセントラス・エナジー(本社:メリーランド州ベセスダ)は11月20日、テネシー州オークリッジの同社施設で遠心分離機の製造活動を再開し、約6,000万ドルを投じて製造能力を拡大すると発表した。
セントラスは、破綻した米国濃縮公社の後継企業として2014年に創業し、2014~2016年にオハイオ州ピケトンの工場で、低濃縮ウラン(LEU)の生産実証に成功した。エネルギー省(DOE)の支援を受け、2023年11月には先進原子炉向けの高純度低濃縮ウラン(HALEU)の第1段階の生産実証で20キログラム(kg)以上を納入して完了、第2段階としてピケトンの工場での年間900kgの生産に取り組んでいる(注1)。
オークリッジの同社施設は、敷地面積が44万平方フィート(約4万900平方メートル)で、ウラン濃縮のための遠心分離機といった原子力関連機器などの製造や検査を行っている。今回の追加投資は、ピケトン工場でのウラン濃縮の大規模な拡張の可能性をサポートするための基礎となる。セントラスはオークリッジの拠点で約120人の従業員を持ち、今回の拡張により、オークリッジで300人以上を新たに雇用する可能性がある(「アトランタ・ジャーナル・コンスティチューション」紙電子版11月20日)。
テネシー州東部ノックスビルやオークリッジには、原子力関連産業が集積しているほか、DOE管轄のオークリッジ国立研究所があり、原子力関連の研究も盛んだ(、注2)。同州のビル・リー知事(共和党)は11月21日、全米をリードし続ける原子力エコシステムを構築するため、継続的な投資促進の最終報告書をテネシー州原子力諮問委員会が提出したと発表した。同報告書には、原子力産業でテネシー州の主導的な地位を強化し、重要なベースロードエネルギーの配備と、州経済全体のカギとなる活気ある原子力エコシステムの支援を可能にする5つの主要分野(注3)で19の提言が記載されている。リー知事は「テネシー州は急速に新しい原子力の震源地となり、米国のエネルギー自立をリードする」「この報告書は、今後25年間で増大する電力需要に効率よく対処する努力の指針となるだろう」と述べた。
(注1)セントラスは2月8日、サプライチェーンの課題により、貯蔵シリンダー(5Bシリンダー)を必要数入手できないため、900kgのHALEUの納入が遅れると発表した。
(注2)フランスの原子力燃料大手オラノの子会社オラノUSAは9月4日、数十億ドルを投じて最新鋭の遠心分離機を備えたウラン濃縮施設を建設する候補地として、オークリッジを選定したと発表した(2024年9月10日記事参照)。
(注3)小型モジュール炉の初期配備に必要な世界初(FOAK)のコストへの対応、強固な原子力サプライチェーンの構築、原子力人材開発の調整と強化、規制対応力、協力体制構築の5つの分野。
(檀野浩規)
(米国)
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