トランプ氏による閣僚級人事指名相次ぐ、安保担当補佐官にウォルツ下院議員など
(米国)
ニューヨーク発
2024年11月13日
米国大統領選挙で勝利したドナルド・トランプ前大統領による、次期政権の閣僚人事の発表が相次いでいる。トランプ氏は11月10日、国連大使にエリス・ステファニク連邦下院議員(ニューヨーク州、共和党)を指名すると発表した。11月11日には、環境保護庁(EPA)の長官にリー・ゼルディン元下院議員(ニューヨーク州、共和党)、大統領補佐官(安全保障担当)にマイケル・ウォルツ下院議員(フロリダ州、共和党)を、11月12日には国土安全保障(DHS)長官にサウスダコタ州のクリスティ・ノーム知事を指名することが明らかになった。
ステファニク氏は2014年から5期、下院議員を務め、外交経験は限られているが、同盟国に対して防衛努力への貢献を求めるトランプ氏の「米国第一主義」の外交政策を展開するとみられている(議会専門紙「ザ・ヒル」11月11日)。ゼルディン氏は2014年に下院議員に初当選し、その後2022年にはニューヨーク州知事選に立候補したが、落選した。トランプ氏はゼルディン氏について、「公平かつ迅速な規制撤廃の決定を確実に実施する」と述べており、ゼルディン氏は環境規制の撤廃を目指すものとみられている。共和党の政策綱領では、「エネルギー生産に対する規制撤廃」「グリーンニューディールの廃止」「自動車産業に対する有害な規制の撤回」などがうたわれている(注1)。
ウォルツ氏は、米国陸軍特殊部隊のグリーンベレーの出身で、2019年から下院議員を務めている。ウクライナに対する支援は必要性を認めているものの、欧州諸国の支援強化も求めており、米国の軍事支援は「欧州から同等の支援が継続されることを条件としなければならない」との立場をとっている。ノーム氏のDHS長官への起用は、不法移民対策強化とみられている。ノーム氏は国家安全保障政策に関する経験はほぼないとされるが、サウスダコタ州兵の米国・メキシコ国境への派遣や、2017年に当時のトランプ大統領が発出したイスラム教徒が多数を占める特定の国の国民の入国を制限する大統領令(国境の壁建設や難民受け入れ停止などブラック)を支持するなど、移民政策に対して強硬派として知られている(ザ・ヒル11月12日)。
トランプ氏はまた、大統領次席補佐官にトランプ政権1期目でスピーチライターを務めたスティーブン・ミラー氏を起用し、移民政策を担当させるとみられている(注2)。共和党の政策綱領で示された、速やかに達成する20の約束では、「国境を封鎖し、移民の侵入を阻止する」「米国史上最大の強制送還作戦を実行する」が最初の2つに掲げられており、移民政策を重視する姿勢がみられる。
そのほか、マルコ・ルビオ上院議員(フロリダ州、共和党)を国務長官に指名する見通しとも報道されている。閣僚などの人事は、2025年1月3日から始まる第119議会の上院で承認される必要がある。11月5日に行われた選挙では、共和党が過半の53議席の獲得を確実にしており、同党が上院で多数党となる(AP通信、11月13日時点)。
(注1)共和党の政策綱領を基にした、トランプ氏の政策については、2024年8月9日付地域・分析レポートおよび2024年米大統領選、ブラック ジャック参照。
(注2)大統領首席補佐官には、スージー・ワイルズ氏を指名している(ブラック ジャック オンライン)。
(赤平大寿)
(米国)
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