ICC、ネタニヤフ首相らに逮捕状発行、国連安保理はガザの即時停戦・人質解放決議案を否決
(オランダ、イスラエル、米国)
テルアビブ発
2024年11月25日
国際刑事裁判所(ICC)は11月21日、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とヨアフ・ギャラント前国防相に対し、人道に対する罪と戦争犯罪の容疑で逮捕状を発行した。ICCは、パレスチナ自治区ガザ地区で、ネタニヤフ首相とギャラント前国防相が戦争手段として飢餓という戦争犯罪に刑事責任を負うと信じるに足る合理的な根拠があると判断した。さらに、食料や水、電気、燃料、特定の医療物資の不足がガザで民間人の一部の破壊をもたらす生活条件を作り出し、その結果、子どもを含む民間人の死亡をもたらしたと信じるに足る合理的な根拠があると判断した。ICCのカリム・カーン主任検察官は5月20日、ネタニヤフ首相やハマス最高指導者のヤヒヤ・シンワル氏ら計5人に対して逮捕状を請求すると発表していた(2024年5月21日記事参照)。
司法機関であるICCには独自の警察や執行機関がないため、容疑者の拘束については、ICCに関するローマ規程締約国124カ国・地域の協力に依存している。ロンドンを拠点とするアラブ系ニュースメディア「ニュー・アラブ」(11月22日)によると、オランダ、アイルランド、カナダ、ノルウェー、南アフリカ共和国がICCに協力する意向を示したという。
イスラエル首相府は11月21日に声明を発表し、「イスラエルは、ICCの虚偽で不条理な告発を全面的に拒否する。いかなる反イスラエルの決定も、イスラエル国家が国民を守ることを妨げることはない」と述べた。
米国のジョー・バイデン大統領は11月21日に声明を発表し、「イスラエルの指導者に対するICCの逮捕状発行は言語道断だ。イスラエルとハマスの間に同等性はない。われわれは、イスラエルの安全保障に対する脅威に対して、常にイスラエルとともに立ち向かう」と述べた。なお、イスラエルも米国もICCには加盟していない。
国連安全保障理事会では11月20日、非常任理事国10カ国(アルジェリア、エクアドル、ガイアナ、日本、マルタ、モザンビーク、韓国、シエラレオネ、スロベニア、スイス)がガザ地区での即時かつ無条件で恒久的な停戦と全ての人質の即時かつ無条件の解放を求める決議案を提出した。
採決の結果、非常任理事国10カ国と常任理事国の中国、フランス、ロシア、英国の計14カ国が賛成したが、米国が拒否権を行使して否決された。
拒否権を行使した米国のロバート・ウッド国連次席大使は声明で「戦闘の恒久的な終結には人質の解放が不可欠で、この2つの緊急目標は表裏一体だ」と指摘した上で、この決議はハマスに対し、「交渉のテーブルに戻る必要はない」との危険なメッセージを送ることになると述べた。
イスラエルとハマスの衝突の詳細についてはジェトロの特集を参照。
(中溝丘、アリエル・マロム)
(オランダ、イスラエル、米国)
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