現代モービス、スロバキアにEV部品の生産拠点設立

(スロバキア、韓国)

プラハ発

2024年10月21日

韓国の現代自動車グループの自動車部品大手、現代モービスは10月16日、スロバキア政府と、電気自動車(EV)用中核部品の製造拠点設立に関する覚書に調印したと発表した(現代モービスのプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。これは、スロバキア中央部のノバーキで、新規製造拠点設立と、北部ジリナ近郊に位置する同社の既存事業所の生産ライン新設に関するものだ。

ノバーキの新工場は2025年後半に完成する予定で、PEシステムと呼ばれる電気モーターとインバーターを組み込んだEV用の統合駆動装置の製造では、同社にとって欧州初の拠点となる。年間生産能力は30万台を見込む。また、現代自動車傘下の自動車メーカー、起亜のスロバキアの完成車工場と、現代自動車のチェコの完成車工場向けに、フロントマスクや計器盤などを製造しているジリナ近郊の既存拠点では、EV用ブレーキシステムとエアバッグの生産を開始する計画だ。上記2拠点への投資額は総額約3,450億ウォン(約380億円、1ウォン=約0.11円)と同社は見積もっている。

これらの計画が実現すれば、同社にとってスロバキアは、バッテリーシステムを生産しているチェコや、バッテリーシステムの生産拠点の設立を進めているスペインに続く欧州3番目の電動化に関する中核拠点となる。欧州におけるEV部品の生産強化の狙いについて、同社は「EUの保護主義的傾向などに対応し、グローバルな電動化の機会を捉えるため、現地での投資とローカリゼーションを通じて、積極的なアプローチを図る」と説明している。

スロバキア政府は、今回の投資のうち、ノバーキの新規製造拠点にかかる新規雇用数を270人以上と見込んでいる。新工場用地のノバーキは旧炭鉱地帯に位置するため、地域活性化や雇用創出に対する政府の期待も高い。覚書調印式に出席したロベルト・フィツォ首相は、現代モービスに対して、2,600万ユーロ相当の法人税減税による投資支援を提供する用意があると述べた。

これに対して、同社のイ・ギュソク社長は「スロバキア政府の支援を得たノバーキ新規工場でのPEシステム製造により、当社の中欧における電動化事業の拡大が実現する」と強調している。

スロバキアには起亜のほか、フォルクスワーゲン、ステランティス、ジャガーランドローバーが製造拠点を有している。2022年にはボルボがEV工場建設を発表した(2022年7月15日記事参照)。スロバキア投資・貿易開発庁(SARIO)は「人口1人当たりの自動車生産台数で世界有数の国」として、自動車産業の集積をアピールする。フィツォ首相は「自動車生産の集中度の高さは、強みでもあり、リスクでもある。そのため、スロバキアは特にEV化に関連する自動車産業の劇的変化に対応する準備を整える必要がある」と指摘している。

(中川圭子)

(スロバキア、韓国)

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