ラマポーザ大統領、教育基本法改正法に署名も、政府内で議論割れる

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2024年09月24日

南アフリカ共和国のシリル・ラマポーザ大統領は9月13日、教育基本法改正法(BELA法)に署名した。BELA法案に対しては第2党の民主同盟(DA)が反対し、論争を引き起こしている。国民統一政府(GNU)が発足してから約2カ月半経つが(注)、メディアではこの法案がGNU内での分裂を引き起こすことを危惧する声が上がっている。

BELA法案は、南アの教育分野で政府の管理体制強化を目指すことを目的としており、DA党首のジョン・スティーンヘイゼン氏は「今回の署名はGNUの将来を危うくするものだ」と警告した。また、同じくDAのシビウェ・グワフーベ基礎教育相は党として反対を表明するため、BELA法案への署名はボイコットした。

今回論争の中心になったのは、BELA法案の第4条と第5条で、公立学校での言語政策と入学政策に関わるものだ。第4条では、幼少期からの学習基礎構築のために、Grade R(幼稚園年長相当、幼稚園や初等学校への通学が義務)の年齢を従来の5~6歳になる子供から、1年早い4~5歳の子供まで対象を引き下げることを定めた。

第5条では、入学試験や言語政策の実施権限を公立学校の管理団体から、政府の部局長や大臣に委譲することを規定しており、これにより入学試験などの条件に政府が関与することが可能になる。南アは広く英語が使用できる国の1つだが、他民族国家のため公用語は11言語あり(英語はそのうちの1つ)、一部地域の公立学校では、入学条件に英語以外の特定の公用語が理解できることを入学条件にしている場合がある。これに対して、以前から与党のアフリカ民族会議(ANC)は、公立学校の入学で「言語や人種、学業成績、学費の支払い能力、スポーツ能力などを条件にすることは、学習者が学校に通う権利を妨げる」と主張していた。DAは、公立学校で「母語教育を受ける権利に関わり、憲法侵害に当たる」と反論している。

ラマポーザ大統領は、GNU内でさらに慎重に議論を行うために、上述の2条項の施行日を3カ月遅らせることを決定した。今後、どのように議論が終結していくか注目が集まる。

(注)国民統一政府(GNU)については、2024年7月16日記事参照

(堀内千浪)

(南アフリカ共和国)

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