全米自動車労働組合(UAW)、ステランティスでのストライキ決行を示唆
(米国)
ニューヨーク発
2024年08月21日
全米自動車労働組合(UAW)は8月19日、自動車メーカーのステランティスが2023年11月に組合との間で締結した新労働協約を順守しなかったことに対し、苦情(グリーバンス)申し立てを準備しており、必要であれば、同社を対象とした全国ストライキに踏み切る用意をしている、と発表した。
新労働協約の中でステランティスは、無期限に稼働停止していたイリノイ州のベルビディア組立工場を再稼働させ、部品配送センターの設置や、スタンピング加工、中型トラックの生産といった事業を、それぞれ2024年、2025年、2027年に立ち上げる約束をしていた(関連ブラック ジャック ルール)。UAWは申し立ての中で、ステランティスが同工場の再稼働を延期したとして、当初の事業計画を順守すべく、速やかな投資計画と資金の拠出を要求する、としている。UAWのショーン・フェイン会長は「自動車産業に従事する労働者を代表して、われわれは、約束を破り、米国の労働者を犠牲にして底辺へ向かう競争を推進しようとする企業に反対する」とステランティスを厳しく追及した。また11月の大統領選挙に向け、8月19日にシカゴで開催された民主党全国大会において、「自動車業界では企業の貪欲さが健在だ」「UAWは、ステランティスや他の企業に対して立ち上がり、コーポレートアメリカ(注)に責任を負わせるために必要なあらゆる措置を講じるつもりだ」とスピーチし、戦う姿勢を示した(オートモーティブニュース8月20日)。
これに対しステランティスは8月20日に声明を発表し、再稼働の延期を認めたうえで、すべての投資は市場の状況と消費者の需要に対応する企業の能力と合致していることが重要だとし、計画は遅れるが約束は守る、と述べた。一方で、UAWが(協約の中で)同社が投資と雇用水準を調整することに同意していることから、再稼働が遅れることは協約違反には当たらず、これを理由にストライキをを起こすことは違法、との見方を示した。
報道によると、ステランティスは、今回の投資延期以外にも、売り上げの減少を受けた生産量の調整のため、8月にミシガン州スターリングハイツ工場で199人を解雇するほか、同州ウォーレン工場では最大2,450人の解雇を予定している。また、ゼネラルモーターズ(GM)も、ソフトウエアおよびサービス関連部門で合計1,000人を解雇するなど、各社でのコスト削減に向けた取り組みが報じられている。
(注)この場合、労働者の権利を軽視する大企業という意味で使われているものと想定される。
(大原典子)
(米国)
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