全米自動車労働組合(UAW)、労使交渉でステランティスと暫定合意

(米国)

シカゴ発

2023年11月01日

全米自動車労働組合(UAW)は10月28日、ステランティスとの44日間にわたる労使交渉を終え、暫定合意に達したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。ステランティス従業員を代表するUAW指導部は、11月2日の投票で新しい協約を承認するか否かを決定する。

今回のステランティスとの労働協約では、組立工の賃金は4年間で25%の昇給、生計費調整(COLA)の復活によって最高賃金は30%以上の昇給(時給40ドル超)、初任給は67%の増加になるという。また、年金支給乗率の増加、一部の工場での従業員を二分する給与体系の廃止などの条件を獲得したと発表した。

また、今回の労使交渉で争点となっていた、ガソリン車から電気自動車(EV)への移行期間の雇用の確保についても大きな動きがあった。UAWは、現在、稼働停止中であるイリノイ州ベルビディアの同社の組立工場で解雇されていた1,200人の従業員を「一時解雇」のポジションに戻すことに合意させた。これにより、工場の再稼働までの期間に、同工場の組合員は補足的失業補償給付金と医療保険の支給を受ける。さらに、同工場での中型トラックの生産開始、EV搭載用バッテリーの製造施設の新設を今回の暫定合意に盛り込んだことは、重要な成果としている。同工場では、閉鎖前までガソリン車仕様のジープ「チェロキー」を生産していたが、2023年2月28日から稼働停止となっていた。オートモーティブニュースによると、新型コロナ禍の影響、世界的な半導体不足、EV事業でのコスト上昇などが理由だという。

ベルビディア工場でのEVバッテリー製造施設の新設は、イリノイ州にとっても大きなプラスとなる。これまで同州のJ.B.プリツカー州知事(民主党)は、ステランティスが同州でEV生産とバッテリー工場の建設をするよう、1年以上にわたって働きかけてきた(クレインズシカゴビジネス10月27日)。同州は、EV生産奨励策の強化のため、2022年12月にEV再構築法を成立させている(2022年12月27日記事参照)。

(星野香織)

(米国)

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