米国土安全保障長官、デミニミス法改正を期待、UFLPA適正執行に向け

(米国、中国)

ニューヨーク発

2024年07月11日

米国国土安全保障省(DHS)のアレハンドロ・マヨルカス長官は7月9日、米国シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)で開催されたイベントで、ウイグル強制労働防止法(UFLPA、注1)に基づく取り締まりの成果や課題を説明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

マヨルカス長官は、UFLPA施行後の2年間で、約9,000件(34億ドル相当)の貨物の輸入を差し止め、UFLPA事業者リストに68企業・団体(注2)を指定したなどとして、取り締まりの成果を強調した。さらに、同法施行を機に、さまざまな産業分野の企業がサプライチェーンの転換に取り組んでいるとの効果を指摘した。具体的には、DHSが強制労働のリスクが特に高いとして優先執行対象分野に掲げるポリシリコン分野で、新疆ウイグル自治区からの脱却を図る動きがあると述べたほか、対照的に北米とインドで太陽電池用ポリシリコンの生産量が2026年までに従来の2倍に増加するとの見通しを示した。

一方で、取り締まりに際して、時として物品のサプライチェーンが不透明であること、適法な貿易を阻害・侵害しないようにすることが課題だと指摘した。また、本来、取り締まるべき物品が、通関手続きが簡素化される少額貨物輸入の特例制度(デミニミスルール)を悪用して流入していると問題視し、「われわれにより大きな権限が与えられるよう取り組んでおり、法改正されることを期待している」と述べた。CSIS人権担当ディレクターのミシェル・ストラック氏から、議会による立法措置が必要かと問われたのに対し、マヨルカス長官は「現在、われわれに与えられた権限の範囲内で取り締まり強化に取り組んでいるが、最終的には法的な権限(の拡大)が必要だ」と回答した(注3)。

また、ストラック氏から、企業がサプライチェーンを見直す際に直面する問題についてコメントを求められたのに対し、マヨルカス長官は、物品のサプライチェーンを特定することの難しさを理解しているとしつつ、企業が人工知能(AI)などの技術を活用する事例を紹介した。また、サプライチェーン移管の難しさも理解しているとしつつ、「われわれは厳しい姿勢で臨んでいる。われわれは、人道的な必要性に適時に対処しないことを決して容認しない」と述べ、取り締まり姿勢を強調した。

なお、DHSは同日、UFLPAの優先執行対象分野にアルミニウム、ポリ塩化ビニル、水産品を追加したと発表した(2024年7月11日記事参照)。

(注1)2022年6月に施行された米国法。(1)物品の採掘・生産・製造が中国の新疆ウイグル自治区で行われた場合、または(2)UFLPA事業者リストで指定される企業・団体が物品の生産などに関与した場合に、強制労働の利用があるとみなして当該物品の米国への輸入を禁止する。具体的には、DHSの所管する米国税関・国境警備局(CBP)が強制労働の利用が疑われる貨物の輸入を差し止めるなどの水際措置を執行して取り締まる。

UFLPAの概要や動向については、ジェトロの特集ページも参照

(注2)直近では2024年6月に、中国企業3社が同リストに追加された(バイデン米政権、ブラック ジャック)。なお、事業者数は併せて指定されている子会社や関連組織を除く。

(注3)米国連邦議会下院のマイク・ジョンソン議長(共和党、ルイジアナ州)は2024年7月に、2024年内にデミニミスルールの改正法案の成立を目指すなどと明らかにしている(2024年7月10日記事参照

(葛西泰介)

(米国、中国)

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