サンルイスポトシ州が炭素税導入、固定排出源からの直接排出が対象

(メキシコ)

調査部

2024年06月20日

メキシコの中央高原バヒオ地域のサンルイスポトシ州で、7月から州税としての炭素税が導入される。州政府は2023年12月18日付で州財政法の改正を公布し、州税としての「環境税」の章(第VI章)を盛り込み、その一環(注1)として炭素税(正式には「大気汚染物質排出税」)を2024年4月1日から適用することとした。その後、同税の影響を受ける事業者の要請に応え、2024年3月26日付官報に基づいて適用を6月10日まで延期した。その後も同州政府や州議会議員が事業者との対話を続け、州財政法の規定に一部修正を加えて6月7日付官報で改正を公布、適用は7月1日からとなった。

課税対象となる行為は当初、温室効果ガス(GHG)の「直接的・間接的な」排出とされ、電力消費など間接的な排出も対象になり得る規定だったが、最終的には工場など固定排出源からの直接排出のみが対象となり、電力消費などを通じた間接排出は対象外になった。その理由として、電力は電力庁(CFE)を通じて主に連邦政府が所管するエネルギーであること、や、他州の炭素税が直接排出のみを対象とする(ブラック ジャック 遊び方ブラック ジャック)中で、サンルイスポトシ州のみが間接排出も対象とした場合、周辺州と比較して同州の事業者が競争上で不利な立場に置かれることを挙げている(州官報公布州財政法改正の前文)。

炭素税の税額は、二酸化炭素(CO2)換算のGHG排出1トン当たり法定価額算出係数(UMA、注2)の3倍〔2024年時点では325.71ペソ(約2,801円、1ペソ=約8.6円)〕。月次予定申告納税を翌月17日までに行い、年次確定申告を翌年8月の最終営業日(当初の3月最終営業日から変更)までに行う。当初は州財政局や環境局に対する同税についての納税者登録や月次報告義務が規定されていたが、納税手続きの重複を省く目的の下、特別な登録や報告義務を廃止した。ただし、関連当局が後日周知する方法に基づき、GHG排出量の測定や納税申告を行う必要があるとみられる。同税による収入は、州政府の公的環境基金や気候変動基金のために用いられることを6月7日付の改正で明記した。

税制インセンティブの詳細は細則公布を待つ必要

州財政法の第36-7条は、州政府が財政局を通じて、環境保全や技術革新、クリーンエネルギーの利用、徴税促進、雇用創出、州経済の開発などを目的とした税制インセンティブを納税者に付与することが可能と規定しているが、詳細は明らかになっていない。州財政法改正の付則第2条は、州財政局が7月1日までに同税に関する細則を州官報で公布して施行することを定めているため、この細則で同税の申告納税方法の詳細や税制インセンティブの内容が明らかになるとみられる。

(注1)第VI章のタイトルは“Impuestos Ecológicos(環境税)”と複数形になっており、複数の税金が盛り込まれることを前提にしたものと考えられる。将来的には他州の事例にならい、事業所から出る廃棄物や排水、鉱物資源の掘削なども課税対象になる可能性がある。

(注2)罰金や社会保険料の計算などに用いる係数で、インフレ率に応じて毎年更新する。2024年時点のUMAは、108.57ペソ(約934円、1ペソ=約8.6円)。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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