米5月の雇用統計は強弱が混在、雇用者数や賃金の伸びは加速、失業率は4%に上昇

(米国)

ニューヨーク発

2024年06月10日

米国労働省は6月7日、5月の雇用統計を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。失業率の上昇や労働参加率の低下など、雇用情勢の緩やかな減速を示唆する数値が見られる一方、雇用者数や賃金などは伸びが再び加速するなど、相反するシグナルが混在している。

就業者数(前月差40万8,000人減)、失業者数(同15万7,000人増)、労働参加率(62.5%、前月から0.2ポイント減)を踏まえた失業率は、前月から0.1ポイント上昇し4.0%となった(添付資料表1、図1参照)。若年層を中心とした労働参加率の低下に加え、就業者数の減少や失業者数の増加が失業率の上昇に寄与したためだ。

失業率について年齢別にみると、16~24歳の若年層の失業率が9.2%と前月(8.2%)から大きく上昇、25~54歳のいわゆるゴールデンエイジの失業率も3.3%と前月(3.2%)からわずかに上昇した。55歳以上は労働参加率の低下も影響し、2.7%と前月(3%)から低下した。これらのデータは労働市場の緩やかな減速を示唆し、労働省が発表している求人統計(JOLT)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに基づく最近の求人数の減少や、米サプライマネジメント協会(ISM)による景況感指数(5月の米ISM指数、製造業で基準値下回るも非製造業は基準値以上、ブラック)の報告とも整合している。

他方、非農業部門の雇用者数は前月から27万2,000人増と、市場予想(18万2,000人増)を大きく上回った。

新規雇用者数増の内訳をみると、民間部門は22万9,000人増、政府部門は4万3,000人増だった。民間部門では財部門が2万5,000人増で、大半が建設業(2万1,000人増)、特に非住宅部門の増加が占めている。製造業は前月から8,000人増加し、化学部門(4,100人増)と食品部門(3,400人増)が大半を占めた。

サービス部門は20万4,000人増だった。主な業種では、ヘルスケアを中心とした教育・医療サービス業(8万6,000人増)のほか、レジャーや外食需要を中心とした娯楽・接客業(4万2,000人増)、対事業所サービス業(3万3,000人増)などが伸びた(添付資料表2、図2参照)。

平均時給は34.9ドル(前月34.8ドル)で、前月比0.4%増(前月0.2%増)、前年同月比4.1%増(前月4.0%増)と伸びが再び加速した。市場予想は前月比0.3%増、前年同月比3.9%増で、いずれも市場予測を上回った。伸びが高かった業種は金融業(5.7%)、製造業(5.1%)、建設業(5.0%)など、伸びが低かった業種は教育・医療サービス業(3.2%)、ブラック ジャック 遊び方通信業(2.5%)と、このところ同様の構成が続いている。

今回の雇用統計は、強弱の数値が混在するものとなっているが、いずれにしても、労働市場が急速に減速する状況にはないことを示唆している。物価情勢(4月の米個人消費支出、実質ベースで前月比0.1%減、実写)と合わせて考えると、現在の米国経済は5月の連邦公開市場委員会(FOMC、)で連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長が利下げを延期するのが適切なケースと言及した状況に近い。米大手保険会社ネーション・ワイドのチーフ・エコノミストのキャシー・ボストジャンシック氏が「これまでは9月に利下げが開始され、年内に合計0.5ポイントの利下げが実施されると予想していたが、雇用の堅調な伸びが続いていることから、利下げ時期が後ずれする可能性が高まった」と述べる(ロイター6月7日)など、市場は利下げ時期のさらなる後退を織り込み始めている。

(加藤翔一)

(米国)

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