バイデン米大統領、全米の大学で広がる抗議活動者に向け発言、暴力行為は違法
(米国)
ニューヨーク発
2024年05月07日
米国のジョー・バイデン大統領は5月2日、全米各地の大学敷地内で続くイスラエル軍によるパレスチナ・ガザ地区での軍事行動への抗議活動に関し、平和的な抗議は保護されるが、暴力が発生する場合は違法だとの考えを明らかにした。
バイデン大統領は発言の冒頭、大学の敷地内で起こっていることは、米国の基本原則である言論の自由と平和的に集会し意見を表明する権利、および法の支配を試すものだとの認識を示した。そのうえで、「米国は無法国家ではなく、秩序が優先されなければならない」との考えを示した。「反対意見は民主主義に不可欠だが、混乱を引き起こしたり、他の人の権利を否定したりすることは絶対にあってはならない」とも述べた。
発言では、国内で広がる反ユダヤ主義の動きにも触れ、いかなる大学敷地内においても、反ユダヤ主義やユダヤ人学生に対する暴力の脅迫の余地があってはならない、と指摘した。他方、多数の死傷者を出したパレスチナ・ガザ地区の状況に同情を示す抗議活動者にも配慮も示し、「反ユダヤ主義、イスラム恐怖症、アラブ系米国人やパレスチナ系米国人に対する差別など、いかなる種類のヘイトスピーチや暴力も許されない」と発言のバランスを取った。抗議行動抑制ための州兵の介入については、明確に否定した。
大学敷地内における治安当局と抗議活動者との対立を巡っては、アントニー・ブリンケン国務長官も5月1日、抗議活動者に対しイスラエルとハマスの軍事衝突を一時停戦に導く米国政府の外交努力に理解を求める発言をしていた(関連ハイパーブラックジャック)。米国内では、ニューヨーク州のコロンビア大学やニューヨーク大学、コネティカット州のイェール大学、カリフォルニア州のカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)など各地で抗議活動が続き収束が見通せない状況となっており(2024年4月30日記事参照)、事態の推移を静観してきた姿勢を転換し、バイデン大統領が今回自らの考えを述べるに至ったかたちだ。11月の大統領選挙を控え、政権の対応次第では、パレスチナ・ガザ地区の状況に同情を示す若者やアラブ系を中心とした有権者の票を失うことになりかねず、全米各地での抗議活動が今後沈静化に向かうのか行方が注視される。
(米山洋)
(米国)
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