ミシガン州で米国初の商業規模のナトリウムイオン電池製造施設の操業開始
(米国)
シカゴ発
2024年05月09日
米国のバッテリー製造スタートアップのナトロン・エナジー(本社:カリフォルニア州)は4月29日、ミシガン州ホーランドにあるナトリウムイオン電池製造施設での操業開始を発表した。同社は3億ドルの施設を改修し、既存のリチウムイオン電池(LiB)の製造ラインをナトリウムイオン電池製造に転換するために、4,000万ドル以上を投資した。この投資には、米エネルギー省エネルギー高等研究計画局(ARPA-E)がSCALEUP(Seeding Critical Advances for Leading Energy technologies with Untapped Potential)プログラムを通じて1,980万ドルを提供した。ナトリウムイオン電池の商業規模での生産は、米国では初となる。発表によると、同社の製造するナトリウムイオン電池は現在市販されているものの中で唯一、UL規格(注)に適合しているという。
ナトリウムイオン電池はLiBなどに代わる優れた電池で、高い出力、高速充電、電池寿命の長さ、安全で安定した化学的特性を持っている。また、ナトリウムイオン電池は高価な希少金属を必要とするLiBとは異なり、地球上の岩塩や塩水に存在する安価で豊富な原料を使用することから、近年注目を浴びている。
同社のウェンデル・ブルックス共同最高経営責任者(co-CEO)は「当社のバッテリーソリューションは、人工知能(AI)に使用されるデータセンターの劇的な増加に伴う電力需要に対応するために使用されることを期待している」とし、「ミシガン州で商業規模の生産を開始することで、効率的で安全かつ信頼性の高いバッテリーエネルギー貯蔵への需要の高まりに対応することができる」と述べた。
なお、ナトリウムイオン電池については、2023年に中国の車載電池最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)が同電池を一部の自動車に採用すると発表したほか、スウェーデンのLiBメーカーのノースボルト(Northvolt)が最先端のナトリウムイオン電池を発表している(2023年12月7日記事参照)。
(注)UL規格とは、米国保険業者安全試験所(Underwriters Laboratories:UL)が策定する製品安全規格で、材料や装置、部品、道具類などから製品に至るまでの機能や安全性に関する標準化を目的としている。
(星野香織)
(米国)
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