バイデン米政権、米国の歴史的黒人大学への投資額が160億ドルに達したと発表
(米国)
ニューヨーク発
2024年05月21日
米国のバイデン政権は5月16日、米国の歴史的黒人大学(Historically Black Colleges and Universities、以下HBCU)への投資額が160億ドルに達したとの声明を発表した。同日には、公立学校における人種差別を違法とした70年前の判決への支持を約束するなど、2020年の大統領選勝利の一因となった黒人票の取り込みを図っている。
黒人大学基金と米国金融機関プルデンシャル・ファイナンシャル傘下のPGIMとの共同調査によると、HBCUは、国内のアイビーリーグや公立大学と比較して寄付金の規模が小さく、多額の寄付金の確保に関する課題に直面し続けているという。HBCUの1つであるハワード大学を卒業したカマラ・ハリス副大統領は声明の中で、「副大統領として何千人ものHBCUの学生と会う中で、この記録的な投資が直接的な影響を及ぼしていることを目の当たりにしてきた」と政権による取り組みを自賛した。
またバイデン政権は同日、公立学校における人種差別を違法とした1954年の「ブラウン対教育委員会裁判」の判決から70年を迎えるのに際し、ジョー・バイデン大統領の宣言を併せて公表した。バイデン大統領は宣言の中で、「『ブラウン対教育委員会判決』によって、全米の生徒に学校が解放されたかもしれないが、これら(黒人学生)の生徒を教室に受け入れるための闘いは続いた」と歴史を振り返り、「全ての生徒が平等に質の高い教育を受けられるようにし、学校制度が生徒の多様性と才能の恩恵を十分に受けられるようにするには、まだやるべきことがたくさんある」と強調した。
政権の発表を受け、米メディアの間では、HBCUへの投資を11月の大統領選と関連付けて説明する向きもある。米3大放送局の1つであるNBCは「バイデン政権は、2020年の大統領選挙で勝利に欠かせなかった黒人と若者の票を獲得するための約束を守り、HBCUへの多大な投資を行ってきた」と振り返りつつ、2024年の大統領選では、HBCUの学生がこれをほかの政策課題と比較し、自身にとってどれだけの意味を持つのかを見極めることになる、と解説した(NBCニュース3月5日)。また、米教育メディアによると、HBCUの指導者の中には、これまでのバイデン政権によるHBCUへの働きかけや支援は、選挙における黒人や若者の有権者獲得に一歩近づくかもしれないとみる者もいるという(「インサイド・ハイヤー・エド」4月1日)。
USAトゥデイとマサチューセッツ州のサフォーク大学が、2024年4月末から5月初旬にかけて全米の登録有権者1,000人を対象に実施した世論調査によると、もし今日大統領選挙が行われた場合、誰に投票するかという問いに対して、バイデン氏への黒人有権者の支持がやや回復。他方、トランプ氏に対する35歳以下の有権者の支持が低下し、支持率はともに37%と、互角になった(2024年5月7日記事参照)。バイデン氏は、5月19日にも黒人有権者の多い南部ジョージア州の大学で演説するなど、黒人票の取り込みを企図しているとみられる。
(吉田奈津絵)
(米国)
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