中国の李強首相が岸田首相と会談、協力推進もALPS処理水には懸念
(中国、日本)
北京発
2024年05月28日
中国の李強首相は5月26日、韓国ソウル市で岸田文雄首相と会談した。第9回日中韓首脳会議への参加のため、韓国を訪問したことに合わせたもの。
李首相は、2023年11月の習近平国家主席と岸田首相の会談(注1)であらためて両国の戦略的互恵関係の全面的な推進が確認され、両国関係の発展に重要な政治的リーダーシップが提供されたと述べた。
その上で、歴史問題や台湾問題は両国関係の政治的基礎に関わる重大な原則的問題、根本的な信義的問題だとした。台湾問題は中国の核心的利益の核心であり、レッドラインだとし、日本が信義を守り、両国関係の発展に積極的な雰囲気を醸成することを期待するとした。
また、両国間では科学技術イノベーション、デジタル経済、グリーン発展、第三国市場開拓などの分野で巨大な協力の可能性があるとした。中国は日本と多分野・多チャンネル・多レベルの友好的な交流を続け、人的往来をさらに容易にし、若者の交流を積極的に進め、友好協力の民意の基盤を強化したいとした。
李首相は、東京電力福島第1原子力発電所のALPS処理水(注2)の海洋放出について、全人類の健康や地球の海洋環境、国際的な公共の利益に関わる問題とした。中国は主な利害関係者であり、日本が長期的な国際的モニタリングの取り決めなどで誠意と建設的な態度を示し、国内外の正当かつ合理的な懸念に真摯(しんし)に対応し、自らの責任と義務を果たすことを望むとした。
中国外交部によると、岸田首相は、日中関係が積極的な発展の勢いを維持することは両国だけでなく、世界にとっても有益と述べた。その上で、日本は中国とともに、首脳間の重要な合意を実行し、ハイレベルの交流を維持し、グリーンエコノミー、医療・介護、第三国市場などの分野で協力を強化し、人的交流を容易にし、地域協力を深化させ、気候変動などのグローバルな問題にともに取り組み、戦略的互恵関係を推進することを望むとした。
また、日本は台湾問題について、1972年の「日中共同声明」の立場(注3)を堅持することに変わりはないとした。
両者は各レベルで対話と意思疎通を強化し、新たな経済ハイレベル対話、ハイレベル人文交流協議メカニズム会議を開催し、ALPS処理水の海洋放出に関する協議と対話を既存の進展に基づいて進め、国際的・地域的問題についても意思疎通と調整を維持することで合意した。
(注1)関連ブラック ジャック オンライン。
(注2)中国はALPS処理水について「核汚染水」と表現している。
(注3)1972年の「日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明」で、「二 日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。三 中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する」としている。
(河野円洋)
(中国、日本)
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