習国家主席が岸田首相と会談、対話・意思疎通の維持に同意、ALPS処理水も協議へ
(中国、日本)
北京発
2023年11月24日
米国サンフランシスコで11月16日(現地時間)、中国の習近平国家主席は岸田文雄首相と会談を行った(注1)。
中国外交部の発表では、双方は両国間の4つの政治文書(注2)における原則と合意の順守をあらためて表明するとともに、戦略的互恵関係の全面的推進という両国関係の位置づけを再度確認し、新時代の要求に一致する、建設的で、安定した両国関係の構築に力を尽くすとした。
習国家主席は、現在の両国関係は正念場にあるとした上で「互いに協力のパートナーであり、脅威とならない」という政治的合意を具体的政策と行動で表すべきだと指摘した。
また、歴史問題、台湾問題などの重要な原則的問題は両国関係の政治的基礎に関わるとし、日本は信義を守るべきだとした。その上で、両国の経済的利益と産業チェーン・サプライチェーンは深く融合しており「スモールヤード・ハイフェンス(限定された分野を厳しく管理する)」「デカップリング」は誰の利益にもならないと強調した。
東京電力福島第1原子力発電所のALPS処理水(注3)の海洋放出については、「全人類の健康、全世界の海洋環境、国際的な公共の利益に関わる」として、日本は厳粛に国内外の合理的な懸念に向き合い、責任ある建設的な態度で適切に処理すべきだと指摘した。
外交部によれば、岸田首相は、日本は中国との「デカップリング」には同意せず、引き続き民間の往来と人的・文化的交流を進め、デジタル経済、グリーン発展、財政・金融、医療・高齢者などの各分野で実務的協力を希望するとした。台湾問題については、日中共同声明における立場から変わりはないと表明した。
外交部によれば、双方は輸出管理対話メカニズムの設立を積極的に評価し、各レベルでの対話・意思疎通を維持することに同意した。また、新たな経済ハイレベル対話、人的・文化的交流協議メカニズム会議を適切な時期に実施し、国際的な地域問題について意思疎通と協調を行い、共に気候変動などのグローバルな課題に対応するとした。
ALPS処理水問題の解決については、建設的態度による協議を通じて、適切な道を探ることに同意した。
中国社会科学院日本研究所の呂耀東副所長は、両国間が抱える意見の対立や問題について、原因の大部分は日本の対中認識と戦略的位置づけに重大な偏りが生じているためとした(「中国新聞網」2023年11月17日)。
(注1)両首脳の会談は2022年11月以来となる。前回の会談については習国家主席が岸田首相と会談、ブラック。
(注2)1972年の日中共同声明、1978年の日中平和友好条約、1998年の日中共同宣言、2008年の日中共同声明を指すとされる。
(注3)中国はALPS処理水について「核汚染水」と表現している。
(河野円洋)
(中国、日本)
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