米衣料品大手エクスプレス、破産法第11章の適用を申請、約100店舗閉鎖へ

(米国)

ニューヨーク発

2024年04月25日

米国衣料品大手のエクスプレス(本社:オハイオ州コロンバス市)は4月22日、米連邦破産法第11章(Chapter 11、日本の民事再生法に相当)の適用を申請した。今後は米国とプエルトリコに構えるエクスプレスブランドの約530店舗のうち約95店舗と、傘下に持つアップウエストの全店舗の閉鎖などを通じて、リース物件と事業の適正化に取り組んでいく意向だ。

閉鎖する店舗は系列も含めて少なくとも18%に上る見通し(「ウォールストリート・ジャーナル」紙4月22日)だが、今回の発表で閉鎖対象外となる店舗は従来どおり営業を続けるとともに、傘下ブランドの通販サイトを通じた販売を継続する方針。また、店舗閉鎖によるリース料の削減と合わせ、既存債務の整理も進めていく。これを進めるべく、既存の貸し手から3,500万ドルの新規融資を受けるとともに、2020年3月に成立した「新型コロナウイルス支援・救済・経済安全保障(CARES)法」(2020年3月30日記事参照)に関連して、内国歳入庁(IRS)から4,900万ドルの資金を調達すると声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで発表している。

1980年創業のエクスプレスは、主にショッピングモールに出店しており、トレンドを取り入れたオフィスウエアやフォーマルウエアを取り扱うブランドとして、20~30代の顧客層から支持されてきた。同社は、米国で6番目に大きいアパレル専門ブランドとして2010年に上場し、2015年には同社の四半期純売上高が7億6,560万ドルに達するなど、米国を代表するアパレルブランドの1つとして多くの消費者から注目されていた(小売り専門誌「モダン・リテール」4月12日)。

しかし、近年は経営の悪化が続いており、調査会社グローバルデータのマネジングディレクター、ニール・サンダース氏は、同社が破産申請に至った要因として、H&Mなどのファストファッションとの競争激化や、オールドネイビーやルルレモンのようなアスレジャーブランドの台頭が同ブランドの売り上げ低迷に打撃を与えたという。また、同氏は、新型コロナウイルス禍以降、在宅勤務の働き方が定着したことで、買い物客がオフィスウエアを購入する必要性が減少したことも指摘した(AP通信4月22日)。

インフレや高金利が続く不安定な経済情勢の中、多くの企業が苦境に立たされており、これまでにも2024年3月には布地・手工芸用品を販売するジョアン、翌4月には米1ドルショップ「99セントオンリーストア」も破産法第11章の適用を申請している()。消費者の購買に対する慎重姿勢が強まる中で、米法律専門誌「ナショナル・ロー・レビュー」(3月4日)によると、映画館チェーンのAMCシアターズや大手百貨店のコールズ、家庭内整理グッズを販売するザ・コンテナ・ストアなども破産リスクの可能性が指摘されており、主に裁量的支出に基づく商品やサービスを販売する企業が苦境に陥っている。

(樫葉さくら)

(米国)

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