飲料容器のデポジット制度、2027年までの導入延期を発表
(英国)
ロンドン発
2024年04月30日
英国政府は4月25日、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドを対象とした飲料容器のデポジット・リターン・スキーム(DRS、注)について、導入時期を2027年10月まで2年間延期すると発表した。2023年1月に発表した意見公募への政府回答(2023年1月24日記事参照)では、2025年10月の導入を目指すとしていたが、英国全土で効率的かつ効果的に制度を展開するには、さらなる時間が必要と説明している。
具体的な予定は次のとおり。
- ~2025年春:法制の施行とDRSを運用する機関(DMO)の決定
- 2025年春~2026年春:DMOの設立
- 2026年春~2027年秋:制度の段階的展開(全国的な回収インフラの整備など)
- 2027年10月:制度の運用開始
対象となる製品は、容量150ミリリットルから3リットルの飲料容器。素材はPETボトル、スチール缶、アルミ缶となっている。
DRSの導入に当たっては、英国政府と自治政府の間で導入時期や対象製品について対立が生じている。
スコットランドは英国全土でのDRS導入に先立ち、対象製品にガラス瓶を含む独自制度を2024年3月から導入する予定だった。しかし、2023年6月に英国国内市場法に基づき、スコットランド政府が独自のDRSに関する適用除外を申請したのに対して、英国政府がガラス瓶を含むことを認めない決定をしたため、スコットランド政府は対象製品や導入時期を英国政府発表のDRSに合わせることとなった。
ウェールズ政府は、対象製品からガラス瓶を除外する英国政府の決定に反対しており、その姿勢を崩していない。英国政府は、ウェールズ政府とのガラス瓶を対象にするか否かで折り合いがつかなかったことがDRS導入の遅れの要因の1つと批判している(「BBC」4月25日)。英国政府は今後も対話を続けるが、ウェールズ政府の姿勢が変わらない場合は、英国国内市場法の順守を改めて求めるとしている。
英国政府は、ガラス瓶を対象に含めると飲料業界に過度な複雑さをもたらすと主張している。小売業者の管理・保管コストを増大させ、ガラス瓶は重く割れやすいために消費者がデポジットの受け取りが難しいという。また、ガラス瓶のポイ捨てが比較的少ないこともガラス瓶除外の理由に挙げている。
(注)飲料用容器の購入時にデポジットを支払い、空の容器を返却することで返金を受けられるスキーム。
(奈良陽一)
(英国)
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