ブラック ジャック web、米大統領選の共和党予備選
(米国)
ニューヨーク発
2024年03月05日
米国の首都ワシントンで3月1~3日、2024年大統領選挙に向けた共和党予備選挙が行われ、ニッキー・ヘイリー元国連大使が勝利した。ヘイリー氏が共和党予備選挙で勝利するのは今回が初めて。
ワシントンの共和党広報担当者による公式最終結果によると、投票者2,035人のうち、ヘイリー氏が62.9%の票を集めた。これまで1月15日のアイオワ州予備選挙(2024年1月16日記事参照)から連勝を続けていたドナルド・トランプ前大統領は33.2%の得票にとどまった(注1)。これにより、ヘイリー氏は共和党指名候補者選出に向けた代議員数全2,429人のうち、首都ワシントンに割り当てられた19人を獲得する。今回を含めてこれまでに獲得した代議員の総数は、トランプ氏244人、ヘイリー氏43人となる(注2)。トランプ氏が圧倒的優位な構図は変わらないながらも、ヘイリー氏がワシントンで一矢を報いた。
ヘイリー氏は3月3日、ワシントンでの勝利後に自身のX(旧ツイッター)を更新し、「機能不全のワシントンと最も近い場所にいる共和党支持者は、ドナルド・トランプが過去8年間で混乱と分裂しかもたらさなかったことを知っている。今こそ再び勝利を収め、われわれの国を前進させる時だ」と述べた。
ジェトロは投票が行われたワシントンのホテルで、投票者に取材を行った。ヘイリー氏に投票したという男性はその理由について、「米国を中道的な国に戻したい。両極端ではなく、若くて新しいアイデアのある国にしたい。トランプ氏のアイデアの幾つかは好きだが、それによって起きる火の粉は好きではない」と述べた。他方で、「トランプ氏の支持者たちは、ほかの共和党の中道候補や民主党の中道候補によってこれまで十分うんざりさせられてきたと感じている」「彼らがジョー・バイデン大統領やヘイリー氏などの『沿岸部のエリート』と認識する人々には、彼らの声が届かないと感じている」として、トランプ氏の支持が広がる理由に米国内の社会的分断の存在を指摘した。
米国政治専門誌「ポリティコ」(3月3日)はワシントンの共和党支持者について、「おそらくこの場(予備選会場)にいる人の半分くらいは、朝に政治ポッドキャストを聞き、一日を通じてニュースレターを読んでいるような人たちだろう」「ワシントンは穏健派が多い地域だ」との声を紹介しつつ、投票行動がワシントン以外の共和党支持者とは大きく異なると指摘するなど、今回の勝利が全米に波及するとは受け止められていない。
ワシントンは民主党が伝統的に地盤とする地区で、前回2020年の大統領選挙では民主党候補者だったバイデン大統領が92.1%を得票し、共和党候補者だったトランプ氏は5.4%の得票にとどまった(注3)。ワシントンでの民主党の予備選挙は6月4日に行われる。
ジェトロの特集ページ「2024年米国大統領選挙に向けての動き」では、大統領選挙に関する最新動向を随時紹介している。
(注1)ヘイリー氏とトランプ氏のほか、いずれも共和党候補者指名争いから撤退を表明しているロン・デサンティス・フロリダ州知事(1.9%)、クリス・クリスティ前ニュージャージー州知事(0.9%)、ビベク・ラマスワミ氏(0.7%)らも候補者名簿に登録されており、得票した。
(注2)ヘイリー氏は今回までに、勝者が当該選挙区の代議員を総取りする方式ではない選挙区で一部の代議員を獲得している。同様に、デサンティス氏やラマスワミ氏も一部の代議員を獲得している。
(注3)無所属候補者への投票などから、合計は100%にならない。
(葛西泰介)
(米国)
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