カタルーニャ州が解散総選挙へ、国政にも不透明感

(スペイン)

マドリード発

2024年03月22日

スペイン・カタルーニャ州のペラ・アラゴネス州首相〔独立主義左派・カタルーニャ共和左派(ERC)〕は3月13日、州議会を解散し、2025年2月に予定されていた州議会選挙を5月12日に前倒しで実施すると発表した。4月21日のバスク州議会選挙、6月6~9日の欧州議会選挙とあわせて、スペインでは3カ月間に3回もの選挙が実施されることになった。なお、2月にはガリシア州議会選挙も実施され、国政与党の中道左派・社会労働党(PSOE)が議席を減らした。

国家予算、中央政権安定にも飛び火

カタルーニャ州の解散総選挙は、2024年州予算案が議会で否決されたことを受けたもの。その原因がPSOEの連立相手、急進左派・スマール(SUMAR)系地域政党の反対票だったという結果に、ERCが不満を持ち、中央政府が策定中の2024年国家予算法に反対票を投じるリスクが浮上。ペドロ・サンチェス首相は同13日、2024年予算法の議会提出を断念した。

これにより、2024年中は前年予算が延長されるが、延長予算が財政や経済に及ぼす影響は限定的との見方が大半だ。財政規律の達成や地方財政への影響を指摘する声もあるが、スペインの貯蓄銀行協会系シンクタンクFUNCASは「国家予算がなくともEU復興基金による公共投資は続行できる。現在の成長見通しでは、財政出動の余地が限られていても景気は堅調さを維持できる」と分析する。

サンチェス政権は、安定した政権運営のためにカタルーニャ独立派2党の協力を必要とするが、カタルーニャ州の解散総選挙によって国政の不透明感が増した。同州議会では、PSOE系列のカタルーニャ社会党(PSC)、中道右派・独立主義政党のカタルーニャ連合(Junts)、現在の州与党ERCが三つ巴となっている。各種報道によると、政権のオプションは独立派連立(Junts、ERCなど)か左派連立(PSC、ERCなど)の二択だが、Juntsが州議会で政権与党とならない場合、国政でも同党が下院でサンチェス政権支持を継続するかどうかは未知数だ。また、Juntsは複数の幹部が公職禁止期間中で正式な州首相候補がいない。2017年の州独立宣言により国外逃亡中のカルラス・プチデモン党首(元州首相)を州首相候補に擁立する動きはあるが、同氏がカタルーニャに帰還し州首相に就任するには、独立運動関係者を対象とした恩赦法の施行(2023年11月17日記事参照)が必須だ。同法は3月14日に下院を通過した段階で、成立は早くて5月後半、実際の法適用は夏ごろとなる見通し。そのため、Juntsの動向は5月の州議会選および恩赦法の適用まで今後数カ月にわたり、国政にも不確実性をもたらす可能性が高い。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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