AU議長に就任したモーリタニアへのEUの期待

(モーリタニア、アフリカ連合、EU)

パリ発

2024年03月01日

エチオピアのアディスアベバで2月17日から18日まで開催された第37回アフリカ連合(AU)総会で、モーリタニアが2024年の議長国に選ばれた(2024年2月22日記事参照)。2024年は北アフリカから議長国を選出することになっており、北アフリカ諸国の全てと友好関係にあり、治安問題で近年揺れているサヘル諸国に対しても中立的立場を貫いているモーリタニアが選ばれた。

モーリタニアのモハメド・ウルド・エルガズアニ大統領は開会演説で、今回の総会のテーマ「21世紀に適合したアフリカの教育」に沿って、若年層が62%を占めるアフリカの教育への努力の必要性と、女性パワー活用の重要性を述べるとともに、アフリカ大陸が直面している最大の課題の1つは、国民生活の安全と安定、経済発展を妨げる武力紛争、テロ集団の拡大で、サヘル地域はこの脅威に最もさらされている地域の1つと述べ、AUの取り組みの必要性を強調した。

サヘル地域内でモーリタニアの政治的役割が拡大する中、EUは同国との政治的・経済的関係の強化に乗り出している。2月8日には欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長とスペインのペドロ・サンチェス首相がモーリタニアの首都ヌアクショットを訪問し、ガズアニ大統領と会談した。西アフリカなどからモーリタニア、セネガルなどを経由して、アフリカの北西海域に位置するスペイン領カナリア諸島への移民を試みる難民の数が2023年から大幅な増加傾向を見せ、1月1日から10月15日までに同諸島は2万3,537人の移民を受け入れた(スペイン内務省統計)。このような状況下、この3者会談では既に15万人と言われるマリからの難民が流入しているモーリタニアに対し、EUは移民対策として2億1,000万ユーロの融資を約束した。

経済面では、EUはモーリタニアの持続可能エネルギー、特にグリーン水素開発の可能性に注目し、3者会談と同じ2月8日にグリーン水素に関するラウンドテーブルが開催された。また、2023年10月に開始された「チーム・ヨーロッパ・イニシアチブ」(注)の一環として、3月にモーリタニアに欧州企業ミッションを派遣し、同国での投資機会を見極めるとしている。

(注)「チーム ヨーロッパ・イニシアチブ」は、EU、EU加盟国、その実施機関、公的開発銀行、欧州投資銀行と欧州復興開発銀行が一体となり、対外活動を行うことで取り組みを効果的行うもの。

(渡辺智子)

(モーリタニア、アフリカ連合、EU)

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