米財務省と内国歳入庁、IRAでのバッテリー生産に対する税額控除の細則発表
(米国)
ニューヨーク発
2023年12月25日
米国財務省と内国歳入庁(IRS)は12月15日、インフレ削減法(IRA)に基づく先端製造業に対する税額控除(内国歳入法45X)の詳細を示した規則案(ガイダンス)の中で、クリーンビークル(注)に搭載するバッテリーの生産に対する税額控除の細則を明らかにした(2023年12月18日記事参照)。
2022年8月に成立したIRAの45X(b)(1)(J)~(M)項では、バッテリー生産者に対し、(1)電極活性物質の生産にかかる費用の10%相当額、(2)バッテリーセルの場合、1キロワット時(kWh)当たり35ドル、(3)バッテリーモジュールの場合、1kWh当たり10ドル、(4)対象となる重要鉱物の生産にかかる費用の10%相当額の税額控除を認めている。いずれも米国での生産が要件になっており、2023年1月以降販売された製品に対し適用する。電極活性物質、バッテリーセル、バッテリーモジュール(総称してバッテリーコンポーネント)に対する控除額は2030年以降は段階的に低減するが、重要鉱物に関してはその限りではない。
今回の規則案では、バッテリーコンポーネントと、対象となる重要鉱物の定義などを詳細に示し、後者に関しては純度要件を満たす人工グラファイトも対象となることを明記した。また、米国での生産要件に関しては、コンポーネント製造に使用する構成要素、材料、サブコンポーネントは対象外となることを盛り込んだ。さらに、重要鉱物に関しては、化学的処理と精錬過程を対象とし、原材料の「抽出」は対象外とした。全米鉱業協会はこれを受けて「このガイダンスは、われわれが必要とする安全で信頼できる鉱物のサプライチェーンを奨励するという議会の意図を支持するものではない」「財務省による法律の誤解は(疑わしい環境、労働、安全基準の下で生産された)安価な鉱物を過剰供給し、世界の一次産品市場に氾濫させようとする中国の意図に起因する流れを納税者の税金で増大させることにつながる」と述べている。今回の規定案については、2024年2月13日までパブリックコメントを受け付けているほか、2024年2月22日に公聴会が開催される予定だ。
(注)バッテリー式電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)の総称
(大原典子)
(米国)
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