11月の米地区連銀報告、全体概況を引き下げ

(米国)

ニューヨーク発

2023年12月01日

米国連邦準備制度理事会(FRB)は11月29日、地区連銀経済報告(ベージュブック、注)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。今回の発表は10月7日から11月17日までのデータに基づく。

全体概況で、経済活動は「前回の報告書以来減速し、4つの地区が控え目な成長、2つの地区が横ばいからわずかな低下、6つの地区がわずかな低下を報告した」とした。10月に発表した前回報告書では、ほとんどの地域で控え目な成長をした9月の報告書から大半の地区でほとんど変化が見られなかったと評価していたことから(2023年10月20日記事参照)、半数以上の地区で成長が減速したかたちとなった。短期的な経済見通しについては「報告期間を通じて悪化した」とした。

分野別にみると、消費は「消費者が価格に敏感になったため、家具や電化製品などの裁量的支出や耐久財の売上高は平均して減少した」ほか、交通サービスの需要が低迷したとした。銀行セクターは「ビジネスローン、特に不動産ローンの需要がわずかに減少」「消費者ローンは引き続き健全だが、一部の銀行では消費者の延滞率がわずかに増加している」とした。

不動産市場は、オフィス部門が低迷するなど商用不動産は引き続き鈍化したと報告した。住宅部門については、幾つかの地区では販売がわずかに減少したと報告した。高金利と在庫不足、建設コストの上昇が引き続きネックとなっているもようだ。

製造業は「活動状況はまちまちで、製造業の見通しは弱含みだ」として、見通しを引き下げた。

労働市場は、一部の地区から、熟練労働者や専門スキルを持つ労働者の獲得が引き続き困難な様子が報告されたものの、全体としては(1)ほとんどの地区で雇用は横ばいから小幅な増加となり、労働需要は引き続き緩和されている、(2)定着率が改善している、(3)一時解雇や人員削減が報告されており、一部の雇用主はパフォーマンスの悪い者の解雇に抵抗を感じていない、(4)多くの地区で賃金上昇圧力が緩和、幾つかの地区では初任給の低下が報告されているなど、総じて雇用情勢の減速を強く感じさせる内容となった。

物価は「依然として高止まりしているが、全体として物価上昇率はおおむね緩和した」とした。分野別にみると、財部門は「食料品価格は上昇、建設資材コストは安定したかあるいは低下」、サービス部門は「貨物輸送費は減少、公共料金と保険料は顕著に上昇」とした。また、ほとんどの地区では緩やかな物価上昇が2024年も続くと予想した。

(注)連邦公開市場委員会(FOMC)の開催に先立って年8回公表しており、銀行からの報告や、ビジネス関係者などの声を基にまとめたもの。

(加藤翔一)

(米国)

ビジネス短信 006765094133d612