9月の米地区連銀経済報告、全体概況では「控え目」な成長続くとの評価
(米国)
ニューヨーク発
2023年10月20日
米国連邦準備制度理事会(FRB)は10月18日、地区連銀経済報告(ベージュブック、注)を発表した。全体概況では、経済活動は「大半の地区で9月の報告書からほとんど変化が見られなかった」とした。9月の報告書では、ほとんどの地区で7月、8月は控え目に成長したと評価していた(2023年9月8日記事参照)。短期的な経済見通しについては、概して「安定する、もしくはやや弱い成長が続く」とした。
分野別にみると、消費については「価格や提供する製品の違いにより、特に量販店と自動車ディーラーの間でまちまちだった。」としたほか、「旅行活動は引き続き改善したが、一部の地区では観光用がわずかに減速したと報告され、幾つかの地区ではビジネス用が増加した」とした。また、銀行セクターに関する記述では、融資需要が「わずか」から「緩やか」の範囲で減少し、消費者信用の延滞率は依然として低いものの、わずかに増加しているとした。
住宅については、9月からほとんど変化せず、住宅在庫は依然として低いままとした。高金利や中古住宅価格の上昇が住み替えを困難にし、結果的に中古住宅市場への供給が制約されている状況だ。
製造業については「活動状況はまちまちだったものの、見通しは改善している」とした。
労働市場については、引き続き熟練労働者の雇用に課題があるとしたものの、(1)全国的に労働市場の逼迫は緩和、(2)雇用が「わずか」から「緩やか」の間で増加、(3)採用と定着率が改善、(4)賃金の伸びは「控え目」から「緩やか」の間での増加にとどまったなど、安定化に向かっていると報告された。
物価については、燃料費、賃金、保険料の増加が物価上昇に寄与し、「全体的に控え目なペースで上昇を続けた」とした。製造業では投入コストの上昇が安定もしくは鈍化している一方で、サービス業では引き続き上昇しているとした。また、消費者が価格に対してより敏感になっていることから、企業がコスト上昇圧力を販売価格に転嫁しにくくなり、利益率の維持が困難になっているとした。見通しについては「今後数四半期にわたり物価は上昇するものの、そのペースは緩やかになる」としたほか、今後大幅な物価上昇を予想する企業数は減少しているとした。
(注)連邦公開市場委員会(FOMC)の開催に先立って年8回公表されており、銀行からの報告や、ビジネス関係者などの声を基にまとめたもの。
(加藤翔一)
(米国)
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