欧州委、CBAM移行期間の報告書登録簿のマニュアルを公表

(EU)

調査部欧州課

2023年11月01日

EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM、CBAMを契機に、貿易担当者もブラック ジャック)の移行期間が10月1日に開始したことを受けて、欧州委員会が10月下旬、「CBAM移行期登録簿(Transitional Registry)」に関するユーザーマニュアルと、EU加盟国のCBAM管轄当局の暫定的なリストをそれぞれ公表した(欧州委ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、注)。欧州委は8月17日、CBAM規則の移行期間における報告義務に関する実施規則を採択し、輸入者およびEU域外事業者のためのガイダンスを発表していたが(2023年8月23日記事参照)、オンライン上に開設された移行期登録簿の具体的な利用方法などさらに詳細が明らかになった。

CBAM規則は、EU域内の事業者が対象製品(鉄、鉄鋼、セメント、肥料、アルミニウム、水素、電力など)をEU域外から輸入する場合に、域内で製造した場合に課されるEU排出量取引制度(EU ETS)の炭素価格と同等の価格の支払いを輸入者に義務付ける。2025年12月31日までは移行期間のため、この支払い義務は発生しないが、対象製品の輸入者に対し、輸入量と製造過程で排出される温室効果ガス(GHG)排出量などを記載したCBAM報告書を四半期ごとに提出するよう求めている。

欧州委が運用する移行期登録簿外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、CBAM報告書の提出先で、2024年1月末に迎える初回の提出期限に合わせて、11月初旬から本格的に運用が開始される。10月27日に公表された移行期登録簿のユーザーマニュアルは、CBAM報告書を提出する輸入者やその認定代理人などに向けて作成されたもので、移行期登録簿へのログイン方法や、CBAM報告書の作成から提出、その後の管理に至る全てのプロセスなどが、画像を交えて詳細に説明されている。移行期間の報告義務を巡っては、その項目の多さなどに対して業界から批判も出ており、丁寧に応えたかたちだ。

なお、CBAM報告書を提出する輸入者は、業務上・技術上の問題が発生した場合、加盟国の管轄当局が問い合わせ先となる。欧州委は10月30日に、管轄当局の暫定的なリストの最新版も公表。問い合わせ先のメールアドレスや電話番号などの連絡先を一覧にしている。管轄当局のリストの確定版はEU官報に掲載される予定。

CBAM対象製品は現時点で限定的だが、今後はEU ETSの対象セクターの製品全般に段階的に拡大されることが見込まれている。特に有機化学品やポリマー、現在対象外の川下製品について、欧州委は2025年末までにCBAM対象製品に追加するか評価する方針(CBAM移行期間が開始、ブラック)で、事業者は引き続き動向を注視する必要がある。

(注)「CBAM移行期間登録簿ユーザーマニュアル」および「加盟国の管轄当局の暫定リスト」は欧州委の専用ウェブサイトからそれぞれダウンロードできる。

(江里口理子)

(EU)

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