欧州初のリチウム精製工場建設へ前進、電池の原材料確保に対応

(ドイツ、ルクセンブルク)

ベルリン発

2023年10月17日

リチウム製錬会社のリビスタ・エナジー・ヨーロッパ(本社:ルクセンブルク)は10月3日、港湾運営会社のニーダーザクセン港と、ドイツ北部ニーダーザクセン州エムデンの工業用地32ヘクタールのリース契約を締結したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。リビスタは6月に、フランスのエンジニアリング大手テクニップ・エナジーズと提携して欧州初のリチウム精製工場をエムデンに建設すると発表していた。

同工場は2026年に生産を開始する予定。生産開始当初は年間最大4万トンのリチウム(水酸化リチウム3万トン、炭酸リチウム1万トン)の生産を目指す。これは電気自動車(EV)85万台分のリチウムイオン電池の生産を賄える量だ。ドイツ貿易・投資振興機関(GTAI)によると、投資額は6億ユーロ、200人の雇用創出が見込まれる。

リビスタはエムデンを進出先に選定した理由として、ドイツが自動車の電動化とバッテリーセル生産に対する明確な政策を持つ国であることや、エムデン港がドイツの北海に面する港の中で3番目に大きく、インフラと地理的条件に優れていること、エネルギー需要の100%近くを再生可能エネルギーで賄っている点を挙げた。

同工場では、オーストラリアやアフリカのスポジュメン鉱石、南米の塩水、使用済み電池からリサイクルされたリチウム中間体など、あらゆる種類のリチウム源や原材料の精製が可能。リビスタによると、ドイツ国内でのリチウム精製は、原材料の輸入依存の低減や循環型経済の促進に貢献するとともに、自動車メーカーや電池メーカーにとってはEUの重要原材料法案()が掲げる2030年までの目標の達成も可能になるという。

自動車産業の専門家委員会、原材料供給リスクへの提言発表

「自動車産業構造転換」専門家委員会(2022年10月25日記事参照)は9月20日、「自動車原材料サプライチェーンのレジリエンス強化のための行動に関する提言PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を発表した。同提言は、ドイツはEV生産や自動運転実現などに必要な金属や鉱物を欧州域外からの輸入に依存していることを指摘。このような原材料は、トランプ ゲーム ブラック ジャック通信技術(ICT)や航空宇宙など他産業でも需要が急拡大していることに加え、地政学的緊張に伴って供給リスクが高まっているとした。また、ドイツの自動車産業は、場合によっては2040年に前述の原材料の供給不足に陥るリスクがあると予測。このため、自動車産業構造転換で重要かつ欧州域外からの輸入に依存しているリチウムなど20種類の原材料を特定し、その供給確保に向けて、(1)原材料の需給や価格などの透明性を確保する取り組みと各種規制の見直し、(2)欧州域外の輸入先の確保と多角化、(3)ドイツ国内やEU域内での原材料の開発と加工、(4)重要原材料のリサイクル率の向上などを提言した。

(中村容子、小川いづみ)

(ドイツ、ルクセンブルク)

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