米政府、EVシフトに向け155億ドルの追加支援を発表、UAWへの配慮も背景
(米国)
ニューヨーク発
2023年09月06日
米国エネルギー省は8月31日、電気自動車(EV)への移行に向け、生産工場の改修や労働者の再雇用に155億ドルの支援を行うと発表した。これは、国内各地の既存工場の改修や高賃金の自動車産業労働者の雇用の維持・拡大、国内におけるサプライチェーンの強化に充当される。
現在、米国系自動車メーカーと全米自動車労働組合(UAW)との間で行われている労働交渉では、EVへの移行に伴う雇用の確保などが争点となっている(関連ブラック ジャック オンライン)。今回発表された支援策では、国内における電動車両やバッテリー生産体制の強化に加え、クリーンエネルギーへの移行過程における労働者の発言力維持と、経済的利益確保への配慮を示す意図もある。エネルギー省のジェニファー・グランホルム長官は「今回の発表は、ジョー・バイデン大統領が、未来の自動車を開発するには、内燃機関からの移行によって課題に直面している地域社会の支援が必要だと理解していることを示している」と述べた。バイデン大統領も声明の中で、今回の支援策が「米国内で自動車製造業の雇用を創出し、企業が痛みを伴う工場閉鎖を回避するのに役立つ」と述べている。
155億ドルの内訳は次のとおり。
1.「米国内生産への転換に対する助成金」(通知番号:DE-FOA-0003106)
- 準拠法:インフレ削減法(IRA)
- 管轄:エネルギー省製造およびエネルギー・サプライチェーン局(MESC〉
- 総額:20億ドル(助成金)
- 内容:電動車両(ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、バッテリー式電気自動車、燃料電池車)の国内生産に向けた、既存の製造施設の転換に対する助成金。小型、中型、大型の車両および部品の製造施設が対象。生産労働者に対する高賃金や労働協約の維持を約束するプロジェクトなどが優先される。
- 応募締め切り:コンセプトペーパーの提出は2023年10月2日、最終募集締め切りは2023年12月7日。
2.「自動車製造転換プロジェクトに対する融資」
- 準拠法:インフレ削減法〔先端技術車両製造(ATVM)融資プログラムの一部〕
- 管轄:エネルギー省融資プログラム局(LPO)
- 総額:100億ドル(融資)
- 内容:現在雇用が維持されている地域社会において、質の高い雇用を維持する自動車製造転換プロジェクトに対する融資。融資を受けるためには、ATVM融資プログラムの規定に加え、既存の労働者の維持、高賃金や福利厚生の提供、新しい施設が完成するまで既存の施設における事業の継続などの労働者保護が条件となる。
- 管轄:エネルギー省融資プログラムオフィス
- 申し込み:事前問い合わせを行う。詳細はエネルギー省ホームページ参照。
3.「バッテリー製造およびリサイクルに対する助成金」および「バッテリー材料の加工に対する助成金」(通知番号:DE-FOA-0003098)
- 準拠法:インフラ投資雇用法
- 管轄:エネルギー省製造およびエネルギー・サプライチェーン局(MESC)
- 総額:35億ドル(助成金)
- 内容:バッテリーの材料、部品、およびセルの米国内における生産拠点の新設、改修、拡張に対する助成金。
- 応募締め切り:追って通知される。
(大原典子)
(米国)
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