米USTR、ブラック ジャック ルール ディーラー置を要請
(米国、メキシコ、カナダ)
ニューヨーク発
2023年08月18日
米国通商代表部(USTR)は8月17日、メキシコ政府が2月に公布した遺伝子組み換えトウモロコシの使用を制限する政令(2023年2月16日記事参照)に関し、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に基づく紛争解決パネルの設置を要請したと発表した。USMCAの規定では、提訴国から要請があった時点で、パネルが設置されたことになる。
米国政府は、メキシコ政府の政令がUSMCA第9章(衛生・植物検疫措置)で定められた義務に不整合と主張し、3月に同章に基づいてメキシコ政府に技術的協議の申し入れを行った(2023年3月8日記事参照)。しかし、協議では問題の解決に至らなかったため、USTRは6月、メキシコ政府にUSMCA第31章に基づく協議を要請し、正式に紛争解決手続きを開始していた(2023年6月5日記事参照、注1)。
USTRが発表した紛争解決パネル設置要請に関する文書によると、米国とメキシコは協議を行ったが、ここでも問題を解決できず、米国は紛争解決パネルの設置要請を決定した(注2)。ロイター(8月3日)によると、メキシコ政府は協議で、遺伝子組み換えトウモロコシが健康に与える影響について共同で科学的検証を行うことを提案したが、米国政府は拒否したとされる。メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領は3月、2国間で遺伝子組み換えトウモロコシによる害が存在するかどうかの科学的な分析がなされることに期待を示していた(2023年3月8日記事参照)。
USTRのキャサリン・タイ代表はプレスリリースで、「USMCA紛争パネルを通じて、米国の懸念を解決し、消費者が引き続き安全で手頃な価格の食品と農産物を入手できるようにすることを目指す」と述べた。トム・ビルサック農務長官も「メキシコとの紛争解決パネルの設置要請により、米国はUSMCAに基づく権利を引き続き行使し、米国の生産者と輸出業者がメキシコ市場に完全かつ公正にアクセスできるようする」と言明した。
USMCAに基づく紛争解決パネルが設置されたのは、今回が5回目(2023年8月8日付地域・分析レポート参照)。これまで、米国がカナダの乳製品輸入に関する関税割当制度(TRQ)の運用を巡って提訴した件で2回と、カナダが同国製太陽光発電製品に対する米国の緊急輸入制限(セーフガード)措置を巡って提訴した件、メキシコとカナダが自動車原産地規則の解釈を巡って米国を提訴した件で、それぞれ設置事例がある(2022年2月17日記事、2023年1月13日記事、2023年2月1日記事参照)。
(注1)米国による協議要請後に、カナダ政府は「米国の懸念を共有する」と表明し、第三者として協議に参加すると発表している。
(注2)USTRは6月の協議要請で、メキシコ政府の政令に加え、同国政府が2021年8月以降、トウモロコシなどの特定の遺伝子組み換えに関わる認可申請を拒否していることについても協議対象に含めていたが、今回の紛争解決パネルの設置要請の対象には、この件は含めていない。
(甲斐野裕之)
(米国、メキシコ、カナダ)
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