総選挙、右左ブロックとも過半数に届かず、政権交渉は難航の見通し
(スペイン)
マドリード発
2023年07月25日
スペインで7月23日に総選挙が実施され、中道右派の最大野党・民衆党(PP)が下院で議席を前回から5割程度伸ばして第1党となったが、右派ブロック全体では過半数に届かず、事前予想で優勢だった政権交代の可能性はほぼ絶たれたとみられる。
下院(定数350)の選挙結果(添付資料表参照)は、PPが2019年11月の前回総選挙から47議席増やし、136議席を獲得して勝利した。第2党の中道左派の与党・社会労働党(PSOE)も122議席(同2議席増)と、5月の統一地方選での大敗(2023年5月31日記事参照)にもかかわらず底堅さを見せた。極右ボクス(VOX)は第3党を守ったが、議席数を3割方減らし、33議席となった。第4党のスマール(SUMAR)は、PSOE政権の連立相手ポデモス党が求心力を失う中で、同党に代わる急進左派連合となった新興勢力だ。政治家として人気の高いヨランダ・ディアス第2副首相兼労働・社会的経済相が代表を務め、31議席を得た。
左派政権続投か再選挙か、カギ握るカタルーニャ独立主義政党
今回選挙では、PPとPSOEの2大政党への回帰、新興政党やカタルーニャ、バスクの民族主義政党の後退が見られた。両党ともに政権樹立を目指す意向だが、それぞれが「極右」「独立主義勢力」と組んでも政権樹立は厳しい膠着(こうちゃく)状態が生じた。PPとVOXの右派ブロックは予想ほど票が伸びず、地方政党を入れても最大171議席しか確保できない見通し。民族主義政党は中央集権強化を掲げるVOXの連立参加を拒否しており、これ以上の支持は得られず、中道右派政権に交代する可能性はほぼなくなったとの見方が強い。
PSOEとSUMARの左派ブロックも、従来の閣外協力相手のカタルーニャ、ガリシアの民族主義左派や、バスクの民族主義2党の支持が得られても計172議席で、過半数には届かない。ペドロ・サンチェス首相の続投に必要となるのは、2017年の違法なカタルーニャ州独立宣言後に国外脱出したカルラス・プチデモン元州首相を中心とするカタルーニャ連合(Junts)の協力だ。同党は見返りとして、独立宣言への関与で刑事訴追される関係者への恩赦と、独立を問う住民投票を行う権利を求めている。ただし、独立投票は違憲で、与党がこれを受け入れることは極めて難しい。同党の支持がなければ、サンチェス政権樹立が阻止され、再選挙となる。従って、今後の決定権はカタルーニャ連合が握っているともいわれる。
連立政権樹立の合意が成立すれば、9月前半には首相選出となるが、そうでなければ、11月に議会解散、2023年末に再選挙が行われる。
(伊藤裕規子)
(スペイン)
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