統一地方選での与党大敗を受け、前倒し総選挙を7月23日に実施へ

(スペイン)

マドリード発

2023年05月31日

スペインの統一地方選挙が5月28日に実施された。12の自治州議会、全国8,131自治体の市議会が対象。即日開票の結果(開票率99.97%時点)、国政の最大野党で中道右派の民衆党(PP)が大躍進し、与党の中道左派の社会労働党(PSOE)に勝利した。

州レベルでは、PPが12州のうち7州で勝利し、マドリードなどで単独過半数を得た。PSOEは大票田のエストレマドゥーラ州を右派ブロックに破られるなど、手痛い敗北を喫した。今後、大多数の州で連立政権交渉が始まるが、極右新興政党のボクス(VOX)が7州で第3党となっており、PPが政権を獲得するにはVOXの協力が必須となる。

市レベル(全国合計)でも、PPが2019年の前回選挙から8.9ポイント増の得票率31.5%を獲得し、社会労働党(同28.1%、1.2ポイント減)を抜いて第1党となった。第3党のVOX(同7.2%、3.6ポイント増)も着実に勢力拡大しているが、今回選挙では再び2大政党に票が集中した。新興政党は、前回第3党だった中道・市民党(C’s)の票の大部分が右傾化し、PPとVOXに流れたとされる。中央政権でPSOEと連立を組む急進左派のポデモス党も主要自治州・都市でプレゼンスを実質的に失った。主要4都市では、PPがマドリードで単独過半数を獲得、バレンシアとセビリアでも政権を奪還。バルセロナでは、引退状態だったシャビエー・トリアス元バルセロナ市長を擁立した中道右派・独立主義勢力が予想外の第1党となり、2015年から政権を維持してきた急進左派政権の続投は絶たれたとみられる(5月29日「エル・パイス」紙)。

約4カ月前倒しで解散・総選挙へ

ペドロ・サンチェス首相は5月29日午前に記者会見を行い、「今回の結果は地方選挙を超える影響があることを示しており、首相、与党代表として政権を民意に委ねる」と述べ、上下院を解散して、総選挙を7月23日に前倒し実施すると発表した。

今回の地方選は年末に予定されていた総選挙の前哨戦だったが、解散・総選挙となることで、得票を減らした左派政党をはじめ、各党は新たな選挙戦への対応に追われる。なお、スペインは7月1日に2023年下半期のEU理事会(閣僚理事会)議長国になる予定。期間中に政権交代する可能性も高いことから、欧州委員会の実務関係者や外交筋からは、議長国アジェンダへの影響を懸念する声や、総選挙後の安定した政権によるEU理事会の運営ができると楽観視する声など、さまざまな見方が出ている(5月29日スペイン国営放送RTVE)。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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