VW、蓄電池セルの新製造方式の開発でドイツ印刷大手と協力
(ドイツ)
ミュンヘン発
2023年06月19日
ドイツ自動車生産大手のフォルクスワーゲン(VW)・グループと同社傘下のバッテリー製造のパワーコは6月16日、蓄電池セル製造の新方式をドイツメーカーと共同開発すると発表した。
具体的には、パワーコは、ドイツの印刷機大手のケーニッヒ・アンド・バウアー(KBA)と、共同開発のための契約を締結した。両社が共同開発する新方式は「ドライコーティング(Dry Coating)」と呼ばれるもの。電極を作る一般的な工程では、正極材と負極材に液状の接着剤などを混ぜる「混錬」、それを金属箔(はく)に「塗工」、その後「乾燥」し、「プレス成型」などを行う。他方、ドライコーティングは電解液と混ぜた正極材と負極材を直接、金属箔に付けるので、工程を一部省略でき、使用するエネルギーを3割削減できる。加えて、工場の床面積も15%削減できる。たとえば、20ギガワット時級の蓄電池工場であれば、4つの並行した「塗工」「乾燥」ラインが不要になり、7,000平方メートル以上のスペースを削減できるという。製造コストも、年間数百万ユーロ規模での削減が可能になるという。
パワーコとKBAによる新方式の共同開発プロジェクトは、2024年末までに開発段階が終了する見込みだ。実際の大量生産への導入は、2026~2027年を目指す。VWはこの新方式を、蓄電池のメガファクトリーの設立地として既に発表されているドイツ北部・ザルツギッター工場(2022年7月22日記事参照)、スペイン・バレンシア工場(EV・コネクテッドカー分野の復興基金プロトランプ)、カナダ・オンタリオ州サンクト・トーマス工場(関連ブラック ジャック ブラック)に導入していく予定。
KBAは創業200年以上の歴史を持つ印刷機メーカーで、本社はドイツ南部のバイエルン州ビュルツブルクにある。2022年の売上高は11億8,570万ユーロで、従業員数(2022年平均)は5,396人。
(高塚一)
(ドイツ)
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