VW、ドイツ北部にグループ初の蓄電池セル工場の建設開始
(ドイツ)
ベルリン発
2022年07月22日
フォルクスワーゲン(VW)は7月7日、ドイツ北部のニーダーザクセン州ザルツギッターに、VWグループ初となる蓄電池セル工場建設の定礎式を行った。オラフ・ショルツ首相やVWのヘルベルト・ディース最高経営責任者(CEO)らが出席した。ショルツ首相は「本日、私たちは一緒になって、ザルツギッターでモビリティーの未来を決定的にする基礎を築く」と祝辞を述べるとともに、欧州やドイツ国内でバッテリーを生産することの重要性を強調した。
同工場で生産するのは、VW独自規格の「ユニファイド・セル」で、量販車用のもの。2025年に製造を開始する予定だ。年間の最大生産能力は40ギガワット時(GWh)で、約50万台分の電気自動車(EV)に相当する。共通デザインのセルの導入により、コストも5割削減される見込みだ。VWグループの全モデルのうち約80%で採用する予定。試作品では、航続距離や充電時間、安全性で性能の高さが示されている。
ザルツギッター工場の運営は、VWが新設した法人のパワーコー(PowerCo)が行う。同社はVWグループ全体のバッテリーに関する蓄電池製造、研究開発、バリューチェーン、生産設備の調達などを一元的に管理する統括会社だ。パワーコーはザルツギッターに本拠を置き、2030年までに200億ユーロを投じ、欧州内で最大2万人の雇用を創出するという。
VWは2021年に欧州に6つの蓄電池工場を2030年までに稼働させると発表している(2021年6月16日記事参照)。ザルツギッター工場はその1つだ。このほか、スペイン東部バレンシア(2022年3月28日記事参照)、VWが出資するスウェーデンのノースボルトの北部シェレフテオの工場増設がある。VWによると、残りの3工場については立地選定中。さらに、北米にも蓄電池セル工場を建設する可能性を検討中という。
ザルツギッターは、VW本社があるボルフスブルクの南西約50キロに位置する。VWの「ザルツギッター・バッテリー・ハブ」には、上述のパワーコー本社や蓄電池セル工場のほかに、蓄電池セルに関する研究開発拠点、テストセンター、パイロット工場、リサイクル施設、サプライヤーパークなどが集積する。ザルツギッター工場は1970年に操業開始、主にガソリンエンジンを製造し、2021年には81万1,000基を製造した。従業員は約7,000人で、うち約5,200人がエンジン製造に従事する。2019年からEV用の回転子、固定子の製造を開始するなど、工場の電動車対応を進めている。
(中村容子)
(ドイツ)
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