物価上昇鈍化とともに為替レート回復、経済安定化への兆しが明らかに
(スリランカ)
コロンボ発
2023年06月06日
スリランカ・センサス・統計局は5月31日、5月のコロンボの消費者物価指数(CCPI)上昇率(インフレ率)が前年同月比で25.2%になったと発表した。4月の35.3%からは10.1ポイントの低下となり、3月の50%超から15.2ポイント低下した4月に次ぐ大幅な下げ幅になる(添付資料図参照)。コロンボのインフレ率は2022年10月から8カ月連続の減少となり、物価上昇速度の鈍化傾向が鮮明になっている。2022年9月には70%近いインフレ率を示していたものの、急激な物価の高騰は一段落している。
スリランカ中央銀行は、物価上昇の鈍化の要因について、緊縮金融・財政政策を通じた総需要の抑制、スリランカ・ルピー高、燃料やガス価格の低下、食品価格の正常化によるものとみている。さらに中央銀行は、2023年第3四半期には1桁台のインフレ率に低下する、という観測を示している。
こうした流れを受け、中央銀行は6月1日、市中銀行による中央銀行への預金にかかる中銀預金金利を13.0%、中央銀行から市中銀行への貸し出しにかかる中銀貸出金利を14.0%に引き下げると発表した。予想以上にインフレ率が鈍化していることなどを理由として、金融市場に対する圧力の緩和を決定した。2022年春以降、急激なインフレが本格化し、中央銀行は2022年4月に、中銀預金金利を5.0%から13.5%に、中銀貸出金利を6.0%から14.5%へと引き上げた。物価の高騰が継続する中で、2023年3月には中銀預金金利を15.5%、中銀貸出金利を16.5%として金融引き締めを強化していた。
スリランカ・ルピーの為替レートが回復傾向に
物価の安定化は、金融政策に加えて、スリランカ・ルピーの為替レートが回復した影響も大きい。2023年5月31日時点では、前年比で米国ドルに対して22.9%、ユーロに対して22.3%、日本円に対して29.6%増価している。中央銀行は為替レートが増価した要因として、市中銀行による中央銀行への外貨売却義務や為替レート指針の日次発表が廃止されたことで、スリランカ国内における外国為替市場の流動性が回復したこと、また市場における期待の高まりが反映された結果、などを挙げている。
スリランカ・ルピーは2022年3月に大きく下落した。2022年5月には前年から40%以上減価し、1ドル=360スリランカ・ルピーに達した。その後は大きな変化なく推移していたが、2023年3月にIMFによる金融支援プログラムへの期待が高まると(2023年3月22日、関連ブラック ジャック 必勝)、1ドル=320スリランカ・ルピー前後に高まった。その後も回復に向かい、5月29日以降は1ドル=300スリランカ・ルピーを下回っている。
(大井裕貴)
(スリランカ)
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