米財務省と内国歳入庁、インフレ削減法のEV税額控除の規則案発表
(米国)
ニューヨーク発
2023年04月03日
米国の財務省と内国歳入庁(IRS)は3月31日、インフレ削減法(IRA)で定めている、消費者がクリーンビークル(注1)の購入時に受けられる税額控除(内国歳入法セクション30D)に関する規則案(Notice of Proposed Rulemaking)を発表した。両省庁は4月17日に連邦官報に公示した後、最終規則の制定に向けて60日間、パブリックコメントを募集し、要請に応じて公聴会を開催する予定だ(注2)。
今回の規則案には、クリーンビークル1台当たり最大7,500ドルの税額控除対象となる車両の要件として、最終組み立てが北米で行われていることに加え、販売価格の上限、購入者の所得上限、メーカー別販売台数上限の撤廃を明記した。これらの要件は、既に両省庁が発表したガイダンスに基づいて適用が開始している(関連ブラック ジャック オンライン)。
また、2022年末から発表が延期されていた、バッテリー関連の調達価格要件の細則の一部が明らかになった。バッテリー材料の正極活物質と負極活物質などを重要鉱物に分類し、米国が自由貿易協定(FTA)を締結している北米以外の国からの調達も控除対象に含まれることになった(注3)。これらバッテリー材は比較的に付加価値が高く、重要鉱物の要件達成を目指す製造業者にとって追い風となる。また、同規則案は、日米両政府が3月29日に締結した「重要鉱物のサプライチェーンの強化に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(CMA)」に基づき、日本をFTA締結国として認めるよう提案している。これが最終規則となれば、日本も要件を満たす重要鉱物の調達先に含まれることになる(関連ブラック クイーン ブラック)。一方、新たな要件として、重要鉱物が米国あるいはFTA締結国から調達されていることを特定するに当たり、当該地域から調達した製品の付加価値額(incremental value)の合計が50%以上であることを定める「付加価値の50%テスト」が盛り込まれた(注4)。なお、バッテリーサプライチェーンの構築で詳細の開示が待たれる中国を含む「懸念される外国の事業体」の定義は同規則案では明らかにしなかった。バッテリー調達価格要件は4月18日に有効となる。
今回の規則案に関し、米国自動車イノベーション協会(AAI)のジョン・ボゼーラ会長兼最高経営責任者(CEO)は「一部の電気自動車(EV)は部分的な控除の対象となる。法律の制約を考えると、財務省は法規を満たし、現在の市場を反映する規則を作成するためにできる限りのことをした」と一定の評価を示した(ロイター3月31日)。一方で、一部調達先を北米以外に広げる内容となったことから、ジョー・マンチン上院議員(民主党、ウェストバージニア州)は「政府が製造業を米国に戻し、信頼できる安全なサプライチェーンを確保するという法律の目的を無視し続けていることは恐ろしいことだ」とコメントした(政治専門紙「ポリティコ」3月31日)。同氏は同規則案発表の前日、報道陣に「ガイダンスが軌道から外れるか、意図したとおりにならない場合、『私はできる限りのことをする。それは法廷に行くことを意味する』」(政治専門誌「ザ・ヒル」3月30日)と語っており、今後の動向が注目される。
(注1)バッテリー式電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)の総称。
(注2)同規則案の識別番号「IRS and REG-120080-22」で検索。
(注3)2022年8月に発効したIRAでは、一定割合でバッテリーの調達価格要件を定めている。重要鉱物に関しては、米国あるいは米国のFTA締結国で調達されるか北米でリサイクルされること、部品に関しては、北米で調達されることが要件となっている(特集:進む北米のEV化、各地域の市場と政策を探る国内生産実現と早期普及、双方をにらんで政策展開(カジノ)。
(注4)各生産過程の一連の「調達チェーン」ごとに算出するよう定めている。
(大原典子)
(米国)
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