スコットランドのスタージョン首相、辞任の意向を突如表明
(英国)
ロンドン発
2023年02月16日
英国・スコットランド自治政府のニコラ・スタージョン首相は2月15日、辞任する意向を突如発表。与党・スコットランド国民党(SNP)党首の職も辞任するとした。同氏は演説で副首相や首相の職を8年ずつ務めたことを振り返り、職務を全うするために全てをささげる必要があったと述べた。現在のスコットランドの状況について、独立に向けた住民投票の実施を英国政府が否定していること(2022年11月29日記事参照)を踏まえ、「スコットランドの民主主義をいかに守り、人々の意思を確実に優先するかを決める義務がわれわれにはある」と述べた。独立に向けては支持を確固たるものにする必要があるとして、そのためには新たな党首が必要と判断したと続けた。
2022年11月には独立に向けた住民投票に英国政府の同意が必要との判断が英最高裁判所でなされたほか、2023年1月にはスコットランド議会で可決された性別変更手続き簡易化に向けた法案の成立を英国政府が阻止していた。同法案に関連しては、性別を変更した犯罪者の扱いを巡ってSNP党内でも意見が割れていたと報じられている。
調査会社ユーガブが実施した1月の調査では、同氏を「好ましい」とした回答が2022年10月の調査から6ポイント低下して44%、「好ましくない」は同5ポイント増の48%となっていた。ただし、スタージョン氏は会見で、今回の辞意がこうした短期的な圧力への対応ではないとしている。
同氏の後任としては、財務・経済相のケイト・フォーブス氏や副首相のジョン・スウィニー氏、前副党首のアンガス・ロバートソン氏、保健・ソーシャルケア相のフムザ・ユスフ氏らが挙がっている(「テレグラフ」2月15日)。しかし、「ガーディアン」紙(2月15日付)は、SNPがこれまでの選挙活動の中でスタージョン氏を常に中心に据えてきたことを踏まえ、同氏なしで今後これまでと同等の魅力を発揮して信頼を得ることは難しいとした一方で、野党・労働党にとっては追い風とした。また、3月には独立に向けた動きを議論・決定すべく、特別党大会を行うことが決まっていたが、同氏の辞意表明に伴って、党内には大会延期の提案も出ていると報じられている(「BBCニュース」2月15日)。
(山田恭之)
(英国)
ビジネス短信 f9a9cbbd30f6c015