バイデン米政権、気球問題への関与で中国企業などを輸出管理対象に追加
(米国、中国)
ニューヨーク発
2023年02月13日
米国商務省産業安全保障局(BIS)は2月10日、米中関係の新たな火種となっている偵察気球問題への関与を理由に、中国の企業や研究機関など6つの事業体を輸出管理規則(EAR)上のエンティティー・リスト(EL)に追加したと公表した。正式には2月14日付の官報で公示されるが、EL追加は10日から有効となる。
ELとは、米国政府が「米国の国家安全保障または外交政策上の利益に反する行為に携わっている、またはその恐れがある」と判断した団体や個人を掲載したリストで、それらに米国製品(物品、ソフトウエア、技術)を輸出・再輸出・みなし輸出などを行う場合には、BISの事前許可が必要となる。ただし、今回追加された事業体は全てのEAR対象製品について、許可申請をしても原則不許可の審査方針が取られることになっている。
BISは今回の追加理由について、2月上旬に米国上空を通過し米中間の外交問題に発展した偵察気球への関与を挙げている。具体的には、中国の航空宇宙関連企業5社と、中国電子科技集団第48研究所が追加され、BISはこれらが中国人民解放軍(PLA)の航空宇宙プログラムを支援しているとしている。国務省は、PLAが偵察気球を運用していたと結論付けている。連邦議会下院では、2月9日に中国共産党を非難する決議が全会一致で採択された。政権および議会において、中国に対する懸念と警戒感が高まっている(2023年2月10日記事参照)。米国戦略国際問題研究所(CSIS)のエミリー・ベンソン上席研究員は「今回の事件は米国民にとって、中国およびそれを取り巻く政策は重要な問題だと真に認識し始める転換点になるかもしれない」と指摘している。加えて、「連邦議会議員は世論を意識してより強硬な対中姿勢を取るようになり、ひいては政権に対して強硬な政策を取るよう圧力をかけることにつながる可能性がある」との見通しを示した(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版2月10日)。
(磯部真一)
(米国、中国)
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