フック国家主席が異例の辞任、副主席が暫定の主席代行に
(ベトナム)
ハノイ発
2023年01月20日
ベトナム国会は、第15期(2021~2026年期)第3回臨時国会を1月18日に招集し、グエン・スアン・フック国家主席の解任を可決した。前日の17日には、ベトナム共産党臨時中央委員会総会で、国家主席、政治局員、中央委員(注)、国防安全保障評議会議長からの辞任が決定しており、国会では人事手続き上の決議がとられた。
現地の複数メディアは、新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)感染拡大時の在外ベトナム人を対象にした帰国便の手配、新型コロナ検査キットの政府入札を巡る職権乱用・収賄などに、多数の政府高官らが関わった汚職事件の政治的な責任を取ったものと報じている。本問題をめぐっては1月5日に副首相2人も同時に解任されている(2023年1月12日記事参照)。ベトナム社会主義共和国となった1976年以降、国家元首に当たる国家主席が任期途中に辞任したのは初めてだ。
フック氏は、2016年から2021年までの首相在任中、日本企業のベトナム投資促進を呼びかけるなど、日越経済関係強化において主導的な役割を果たし、2022年9月の安倍晋三元首相の国葬にも参列していた。2023年1月9日には訪越した菅義偉前首相と会談し、フック氏から、日越外交関係樹立50周年を機にした民間投資、ODA、サプライチェーン多元化など、両国経済間のさらなる関係促進を提案していた矢先だった。
臨時国会の終了後、第15期国会常任委員会は、政治局の決定に基づき、ボー・ティ・アイン・スアン国家副主席を暫定の国家主席代行に任命することを発表した。スアン氏は、新たな国家主席が選出されるまで代行を務めることになる。
なお、2018年にチャン・ダイ・クアン国家主席が死去した際には、ダン・ティ・ゴック・ティン国家副主席(当時)が代行を1カ月間務め、その後、グエン・フー・チョン書記長が国家主席を兼任している。
(注)政治局、中央委員会はそれぞれ、ベトナム共産党の意思決定機関、指導機関として組織されている。
(萩原遼太朗)
(ベトナム)
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