副首相2人を同時解任、汚職事件の引責か
(ベトナム)
ハノイ発
2023年01月12日
ベトナム国会は1月5日、第15期(2021~2026年期)第2回臨時国会(2023年1月5~9日)において、ファム・ビン・ミン筆頭副首相とブー・ドゥク・ダム副首相を解任し、その後任としてチャン・ホン・ハー氏(天然資源環境相)とチャン・ルー・クアン氏(ハイフォン市党委員会書記)を副首相に任命するという首相提案を承認した。ファム・ミン・チン首相を支える4人の副首相のうち、2人が同時に交代する異例の人事となった。
2022年12月30日に開催されたベトナム共産党臨時中央委員会総会で、ミン氏の政治局員および中央委員(注)からの解任、ダム氏の中央委員からの解任が決まり、両者は副首相から退任する方針となっていた。なお、新副首相2人の所管は現時点では明らかになっていない。
新型コロナ流行時の不正をめぐり、政府関係者ら140人以上が処分
副首相2人の処分理由は明らかになっていないが、新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)感染拡大時の在外ベトナム人を対象にした帰国便の手配、新型コロナ検査キットの政府入札を巡る職権乱用・収賄などに多数の政府高官らが関わったことによる引責とみられる。ミン氏は当時、外相も兼任するなど外交分野を所管、ダム氏は保健分野を所管していた。
帰国便の問題では、ブ・ホン・ナム駐日大使、グエン・ホン・ハー駐大阪総領事をはじめ、各国大使館、外務省、保健省、交通運輸省、公安省の職員ら39人が起訴された(肩書はいずれも当時)。検査キットの問題では、グエン・タイン・ロン保健相や、チュー・ゴック・アイン・ハノイ市人民委員長、ファム・スアン・タン・ハイズオン省党委員会書記を含む102人が起訴された(肩書はいずれも当時)。2023年1月3日時点では計141人が処分されているが、公安省のトー・アン・ソー広報官によれば、今後も逮捕者は増える可能性があるという。
共産党の最高指導者であるグエン・フー・チョン書記長は反汚職を強く主導している。一連の事件の処分もチョン書記長の意向を受けた動きとみられるが、要職の空席が長期化し、各種許認可や行政手続きの遅延が発生している。また、政府関係者の汚職や不正による逮捕に加え、民間企業トップの起訴も相次いでいるため、株価の低迷や外国投資家の信頼性低下を惹起(じゃっき)し、日本を含む外国企業のベトナムでのビジネス活動に悪影響が出ることが懸念される。
(注)政治局、中央委員会はそれぞれ、ベトナム共産党の意思決定機関、指導機関として組織されている。
(萩原遼太朗)
(ベトナム)
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