EUの「協力と検証メカニズム」を卒業、シェンゲン協定参加に期待
(ルーマニア、ブルガリア)
ブカレスト発
2022年11月25日
欧州委員会は11月22日、ルーマニアによる「協力と検証メカニズム(Cooperation and Verification Mechanism:CVM)」下での進展が、同CVMを終了する要件を十分満たしているとする、欧州議会とEU理事会(閣僚理事会)宛ての報告書を発表した(プレスリリース)。ルーマニアとブルガリアは2007年のEU加盟時に司法制度改革と汚職撲滅について、加えてブルガリアは組織犯罪分野についても改善が求められていたため、CVMは両国を支援するための移行措置として設定された。以降、毎年1回、進捗報告書が公開されてきた。今回の報告書の結論部分で「ルーマニアではCVMの最終段階が実施され、全加盟国に適用される司法制度と腐敗防止政策への協力、監視を進められると確信している」とした。
ルーマニアの主要TV局は臨時ニュースでクラウス・ヨハニス大統領による歓迎の声明を速報し、与党・社会民主党(PSD)のマルチェル・チョラク(Marcel Ciolacu)党首は「シェンゲン協定加盟により近づいた」と評価した。
シェンゲン協定加盟(2022年5月25日記事参照)をめぐっては、欧州議会が、ブルガリアとルーマニアはもう長い間協定加盟の要件を満たしてきており、加盟を認めないことは差別的扱いでEU単一市場に悪影響を及ぼすことから、2022年末までに加盟させるべきだとする決議を10月18日に採択していた。しかし2日後の20日、オランダ議会は両国の加盟に反対する決議を採択した、と報じられた。
報告書公表に先立ち、欧州委は11月16日の声明で、欧州理事会に対し、ブルガリア、ルーマニア、クロアチアの3カ国がシェンゲン協定に参加できるよう、必要な決定を遅滞なく進めることを要請。2022年下半期からチェコがEU理事会議長国となっているEU理事会の、12月8~9日に開催されるEU司法・内務相理事会で加盟を承認するよう勧告した。可決には理事会の全会一致が要件である。
(注)シェンゲン協定参加国は、ブルガリア、クロアチア、キプロス、アイルランド、ルーマニアを除くEU加盟国に、EFTA加盟国(アイスランド、ノルウェー、スイス、リヒテンシュタイン)を加えた26カ国。
(西澤成世)
(ルーマニア、ブルガリア)
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