ハンブルク港にグリーンアンモニア輸入設備の建設決定、浮体式LNG基地も完了
(ドイツ、米国)
デュッセルドルフ発
2022年11月29日
ドイツの経済・気候保護省とハンブルク港、米国産業ガス大手エアープロダクツ、ドイツのエネルギー企業マバナフトの4者は11月17日、ハンブルク港でのグリーンアンモニア(注)の輸入ターミナル建設決定を発表した。同ターミナルはドイツ国内で初の水素やアンモニアなどの水素派生物の輸入ターミナル。水素の導入促進を大きく後押しし、気候保護を強化することが期待される。
同ターミナルは港内のマバナフトの既存の貯蔵設備に建設され、マバナフトの子会社オイルタンキング・ドイチュラントが運営を担当する。2026年に運転開始の予定だ。エアープロダクツがサウジアラビアで製造したグリーンアンモニアを荷下ろしした後、その大部分をハンブルク港内でグリーン水素に変換し、エアープロダクツが地元やドイツ北部の需要家に供給する予定。17日の発表は、2022年2月にハンブルク港とエアープロダクツがハンブルク市やドイツ北部での水素の製造や利用の促進に向けて締結した覚書(MoU)に続くものだ。
ロベルト・ハーベック経済・気候保護相は17日の発表で「ドイツでの水素経済促進のマイルストーンで、ドイツや欧州の水素市場全体への強いシグナルでもある」と述べた。また、水素の利用により、産業や火力発電所の脱炭素化やエネルギー輸入元のさらなる多様化が可能となるため、同大臣は「水素とアンモニアなどの水素派生物はカーボンニュートラルかつ将来性のある経済のための主要な要素だ」とした。ドイツ国内にも水素製造施設を備えるが、水素の輸入も必要だ。
LNGインフラの水素用への転用も目指す
ドイツで建設中の浮体式LNG(液化天然ガス)貯蔵・再ガス化設備(FSRU)6隻のうち1隻目が11月15日、ウィルヘルムスハーフェン市に完成した。稼働開始は2022年末の予定。FSRU6隻で年間ガス需要の約3分の1を満たす(関連ブラック ジャック web)。一方、連邦政府はLNG利用は一時的で、環境目的を達成するため、将来的にLNG用のインフラは水素用に転用する計画だ。2043年末以降も稼働するLNG設備は水素とその派生物用となる。
なお、ドイツの複数メディアは20日、FSRUにかかる費用が2022年の連邦政府の見積もり29億4,000万ユーロから約65億6,000万ユーロに大幅増加の見込みと報じた。理由は、運営費用や陸上での追加インフラの費用など、当初予想の費用が具体化され金額が確定したため。加えて、FSRU2隻のチャーター期間を当初予定の10年から15年へ延長したことなどだ。
(注)再生可能エネルギー電力、水、空気を原料とし、製造時に二酸化炭素(CO2)を排出しないプロセスで製造されるアンモニア。
(ベアナデット・マイヤー)
(ドイツ、米国)
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