政府、5隻目のFSRUの詳細を発表、グリーン水素インフラ整備も進む
(ドイツ)
デュッセルドルフ発
2022年09月13日
ドイツ連邦経済・気候保護省は9月1日、政府がチャーターする5隻目の浮体式LNG(液化天然ガス)貯蔵・再ガス化設備(FSRU、注1)の詳細を発表した。再ガス化容量は年間最低50億立方メートルで、2023年第4四半期に稼働する予定だ。設置場所は、既に1隻の設置が予定されている、ドイツ北部ニーダーザクセン州ウィルヘルムスハーフェン市だ(2022年5月17日記事参照)。
船舶所有者は米国のLNG企業であるエクセレレート・エナジーで、同FSRUの提供や技術上の運営、その他の必要なサービスを提供する。世界的なグリーン水素(注2)企業であるトリー・エナジー・ソリューションズ(TES)、ドイツのエネルギー大手エーオン、フランスのエネルギー事業大手エンジーが提携する。エンジーは経済・気候保護省に代わって、FSRUのチャーターやLNG供給の一部を担当し、TESはFSRUの開発や運営を担当する。
また、TESはウィルヘルムスハーフェン市において、荷受けターミナル、貯蔵施設、ゼロエミッションの酸素燃焼発電プラント(注3)を含むグリーンエネルギーハブを開発中だ。それに向けて、TESおよびエーオンは2022年3月、グリーン水素の戦略的提携に関する覚書(MoU)を締結した。TESは同ターミナルの稼働までの間だけ、LNGの荷下ろしを行い、FSRUの稼働後12カ月以内にグリーン水素の円滑な輸入への統合を目指している。TESによると、2025年に水素の荷下ろしの開始が可能となる。5隻目のFSRUは5年間チャーターされるが、グリーンエネルギーハブの稼働までの期間限定で運営される予定だ。
なお、2023年・2024年の冬季までに連邦政府がチャーターするFSRU5隻により、年間の再ガス化容量は最低250億立方メートルになる(添付資料表参照)。合わせて、民間コンソーシアムが主体となりチャーターするFSRU1隻により、最低45億立方メートルの再ガス化が可能になる。このため、2021年のガス需要905億立方メートルを基準とすると、FSRU6隻で、ドイツで必要な天然ガスの需要の約3分の1がカバーできる。
(注1)Floating Storage and Regasification Unitの略。陸上にLNG基地をつくらず、貯蔵・再ガス化設備を加えた専用船を洋上に係留する。
(注2)再生可能エネルギー由来の電力を利用して、水を電気分解して生成される水素。製造過程で二酸化炭素(CO2)を排出しない。
(注3)空気から窒素を分離し、純酸素で炭素を含む燃料を燃焼する方法。通常、空気燃焼法では燃焼による排ガス中に高濃度の窒素が含まれるが、酸素燃焼法では排ガス中に窒素が含まれないため、CO2の濃度が高くなる。ゆえに比較的容易にCO2の分離・濃縮が可能になり、CO2回収・利用・貯留(CCUS)の効率化ができる。
(ベアナデット・マイヤー)
(ドイツ)
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