COP27でFAOが農業・食料分野におけるイニシアチブを公表
(アフリカ、エジプト)
中東アフリカ課
2022年11月22日
エジプトで開催された国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)(2022年11月7日記事参照)において、国連食糧農業機関(FAO)は、11月12日に「持続的変革のための食料・農業イニシアチブ(FAST)」を公表した。
世界の人口は80億人に達して増加傾向が続く中、気候変動や異常気象が農業に影響を与えており、今後どのように食料を賄うのかがCOP27で議論となった。世界では干ばつ、熱波、洪水などに対して脆弱(ぜいじゃく)な国々において、飢餓や栄養不足のリスクが増加しており、特に開発途上国での影響が大きい。東アフリカの「アフリカの角」の地域での干ばつにより、3,700万人が飢餓に直面し、パキスタンでも大きな洪水で農地に大きな損害が出ている。
このような中、同イニシアチブは、2030年までに気候変動への適応するための農業・食料システムの変革を目指す。併せて、世界の気温上昇を1.5度までに抑える目標を達成するために、農業分野における温室効果ガスの排出削減も目指す。
同イニシアチブは、各国政府のみならず、世界中の研究機関、民間金融機関、NGOなどの取り組みの触媒として設計された。特に、農業・食料関連支援に充てる気候変動資金の増加を促す。FAOのマリア・ヘレナ・セメド副事務局長は、過去10年間で気候資金は増加しているが、農業・食料への資金は減少していると指摘した。また、中小規模の食料生産者に適切な財源が割り当てられるための大胆な変革と行動が必要と主張した。気候変動資金のうち、農業・食料関連は全体の約26%を占めているが、昨今はエネルギー関連にも気候変動資金が多く流れている。
(井澤壌士)
(アフリカ、エジプト)
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