欧州産業界、EU次期議長国スウェーデンへの政策提言発表、競争力強化を重視

(EU、スウェーデン)

ブリュッセル発

2022年11月28日

ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)と会員40団体は11月25日、EU理事会(閣僚理事会)の2023年上半期の議長国スウェーデンに対する要望をまとめた政策提言書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。政策提言書では(1)エネルギー危機対応とグリーン化、(2)企業負担の軽減、(3)単一市場の強化、(4)ルールに基づく国際貿易の推進、(5)デジタル化の加速、(6)イノベーションの促進と労働者のスキルアップという6項目を最優先課題として挙げた。EUは「貿易と経済統合を通じた平和と繁栄」という基本原則に重点を置くべきであり、投資先として魅力的な環境を整えることは長期的な経済成長や雇用創出や、グリーン化・デジタル化の促進につながると主張。欧州には「包括的な競争戦略」が必要として、スウェーデンが議長国の間に、上記6項目について断固として取り組むべきとした。また、ビジネスヨーロッパのフレデリック・パーション会頭は政策提言書の発表に当たって、エネルギー価格の抑制には「ゲームチェンジャー」となるようなEUレベルの大胆な対策や、人権・環境デューディリジェンス関連法令(欧州委、人権・環境デューディリブラック)などを例に挙げて、規制の制定では企業負担を可能な限り軽減する姿勢が必要との認識を示した。

米国のインフレ削減法を懸念、EUに「対話による解決」促す

企業負担の軽減について、政策提言書では、企業の活動に影響を及ぼすEUの全ての政策や規制は企業規模を問わず、全ての欧州企業の競争力維持を重視したものとし、EUにはより論理的で一貫性を持った「より良い規制」が求められていると指摘。複数の関連規制による過剰な負担や、企業にとっては不必要と思われる現行規制の改正を避けることや、実行可能な内容とすることなどが重要だとした。また、EUの産業競争力の基礎にあるのは「物・サービス・人・資本・データが自由に移動できる単一市場」として、障壁となっている規制のさらなる撤廃や企業負担の軽減が早急に求められるとした。

さらに、EUが開かれた、ルールに基づく通商政策を遂行することは、欧州への投資促進にとって重要で、欧州企業がグローバル市場で競争力や主導的な立場を維持するには、貿易協定の締結をさらに進めることや、公正な競争の担保が必要だとした。政策提言書は、米国のインフレ削減法()への懸念も示し、同法の施行が迫る中、EUに対して、12月に開催されるEU米貿易技術評議会(TTC)での協議(関連ブラック ジャック オンライン)など、米国との対話による摩擦回避を強く促した。

このほか、米国や中国と比較して、EUのGDPに対する研究開発費の比率が低いことや、当初は欧州で技術開発を行いながらも、域外に移転して事業規模を拡大させる企業もあることを指摘し、EUのイノベーション力の低下に危機感を示した。そこで、研究結果の産業利用を促進するため、イノベーション企業に優遇的な法令を定めることや、知的財産権の保護や人材開発の強化などが必要だとした。また、高スキル人材を中心に人材不足が成長の足かせとなっている欧州企業もあるとして、雇用のミスマッチの解消、EU域外からの人材確保の促進などに取り組むように求めた。

(滝澤祥子)

(EU、スウェーデン)

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