2023年1月施行の使い捨てプラスチック課税、国税庁がFAQ公表
(スペイン、EU)
マドリード発
2022年10月20日
スペイン国税庁(AEAT)は9月下旬から、2023年1月1日に施行される「使い捨てプラスチック容器税」の税務上取り扱いに関するよくある質問(FAQ)や手続き文書を同庁ウェブサイトで順次公表している。
同税は、EUの廃棄物枠組み指令と特定プラスチック製品の環境負荷低減に関わる指令(欧州委、ブラック ジャック)の国内法として、2022年4月10日に施行された「循環型経済に向けた廃棄物・土壌汚染法(法7/2022)」で新設された。プラスチック廃棄物の排出抑制やリサイクル推進を目的として、スペインで使用される再利用できないプラスチック製の容器や包装の製造者、またはEU域内外からの輸入者に対し、プラスチック含有量1キロ当たり0.45ユーロを課税する。民間シンクタンクの試算によると、同税により約7億ユーロの税収が見込まれる。EUレベルでは、2021年から各加盟国に非リサイクル・プラスチック包装廃棄物の排出量1キロ当たり0.8ユーロの分担金が課せられており、スペインは現在、年間約5億ユーロを拠出している。
対象となる使い捨てプラスチック容器包装製品には、最終製品だけでなく、ペットボトルのプリフォーム(注1)、熱可塑性樹脂(注2)などの中間製品、ふたやリング類も含まれる。適用免除品目は、医薬品、医療機器、特別用途食品、病院用粉ミルク、医療由来の有害廃棄物の容器・包装、および農業・畜産業向けのサイレージ(注3)用フィルムのみ。
課税は、対象製品の国内販売時、または輸入通関時(域内輸入の場合は出荷の翌月15日)に行われる。輸入量が1カ月当たり5キロ以下までの場合は免税となる。仕向地が国外の場合は課税されない。また、二重課税を防ぐため、課税済みの中間製品から最終製品を製造する事業者には課税されない。
納税事業者は、プラスチック税専用の税務登録を行い、付加価値税(VAT)の申告と同様に、四半期または毎月の電子申告・納付が求められる。製造業者は、販売先に同税を転嫁し、その請求をインボイスに別途記載しなければならない。課税対象の包装容器を購入して加工後に輸出する場合など、事後還付を受けられるケースもある。罰則規定もあり、納税を怠った場合は、その額の1.5倍にのぼる罰金(最低1,000ユーロ)が科せられる。
EU指令を上回る幅広い製品が対象
今回、国税庁が公表したFAQでは、課税対象となる製品が50種類近く例示されており、「特定プラスチック製品の環境負荷低減に関わる指令」で消費削減が求められる品目(食品・飲料容器など)よりもはるかに多岐にわたる内容となっている。具体的には、フィルム、トレイ、テープ、ブリスターパック(注4)などの包装材、缶飲料のマルチパック用リング、ヨーグルトなどの個包装、ソース容器、ドレッシングの小袋、化粧品のキャップに内蔵されたアプリケーターや試供品袋、シャンプーなどのボトル、消毒薬や除草剤、潤滑油などのボトル、スーツケース用保護ラップなどが列挙されている。
課税対象外となる品目例として、ゴミ袋、DVD付属ケース、コーヒーカプセル、プリンターのカートリッジ、ボールペン、デオドラントスティックなどが挙げられている。課税対象外であるかどうかの判断は、包装容器が製品に不可欠な部分として製品ライフサイクルを通じて製品とともに使用、消費、処分されるという点がポイントとなる。
課税対象は非常に幅広く、英国のような年間取扱量に基づく免除枠(関連オンライン ブラック ジャック)もないため、多くの企業がコンプライアンス負担増やインフレ下での、さらなるコスト上昇の影響を受ける。9月末には食品飲料や容器包装、小売り流通、化粧品、自動車、化学、プラスチック産業など15もの業界団体が財務相に同税の施行延長をあらためて要請した、とメディアで大きく報じられた。しかし、同税は2023年予算案でも言及されており、年始からの施行は確実とみられる。
(注1)ペットボトルの材料で、膨らませる前の段階の中間製品。
(注2)加熱により軟化して様々な形に加工することができる合成樹脂。
(注3)家畜用飼料の一種で、飼料作物を長期保存するため、サイロなどで発酵させたもの。
(注4)透明のプラスチックを、商品に合わせて成形した包装。
(伊藤裕規子)
(スペイン、EU)
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