パナソニックエナジー、カナダの黒鉛製造企業NMGとEV電池負極材料供給で覚書締結

(カナダ、日本)

トロント発

2022年10月26日

パナソニックエナジーは1020日、カナダの黒鉛製造企業であるヌーボー・モンド・グラファイト (本社:ケベック州サンミシェルデサン、以下 NMG)と、電気自動車(EV) 用電池材料の黒鉛について長期供給契約に関する覚書を締結するとともに、三井物産を含めた3社間での協業を発表した。NMG が保有するケベック州のマタウィニー鉱山で採掘された黒鉛を精製し、同州ベカンクールの電池材料工場で負極材を生産する原料から負極材までの一貫生産事業開発に向けて実現可能性調査を行い、2022 年度内の長期供給契約締結を目指すとしている。

また、NMGによると、三井物産が2,500万ドル、ケベック州投資公社と投資会社パリングハーストが1,250万ドルずつの合計5,000万ドルを出資し、同事業へのプロジェクトファイナンスに充当することも明らかにした。

米国では、20228月にインフレ削減法が成立し(2022年8月17日記事参照)、今後、EV購入時の税額控除適用に、黒鉛など電池の原材料となる重要鉱物がカナダを含む自由貿易協定(FTA)の締結国で調達され、EV用バッテリー部品が北米で一定割合以上が製造されていることが条件として課されることになった(2022年8月5日記事参照)。こうした動きを受け、EV関連各社が北米で完結するサプライチェーンの構築を急いでいる。

パナソニックエナジーの只信一生社長は「カナダでの全く新しい負極一貫生産を通じて、北米における環境に配慮したサプライチェーン構築の可能性を探るべく、今回のNMGとの戦略的パートナーシップに参加することを大変うれしく思う」と覚書の締結を歓迎した。

NMGのエリック・デゾーニエ社長兼最高経営責任者(CEO)は、三井物産とパナソニックエナジーの参加について、「われわれのビジネスモデルの健全さを立証するものであり、また、北米最大の天然黒鉛一貫生産の確立に向けた事業計画を推進する上で、極めて重要な時期におけるテコとなるもの」と述べている。

また、三井物産の垣内啓志マネージング・オフィサーは「北米で完結する負極材の採掘から製造までの全工程を環境に配慮したかたちで確立するという前例のないチャレンジに挑むエリック・デゾーニエ氏のビジョンに触発されている」と述べている。

3社は今後、マタウィニー鉱山およびベカンクール電池材料工場の実現可能性調査を経て、プロジェクトファイナンスおよび最終投資判断(FID)を行う予定で、商業生産開始にはFIDから24カ月の建設期間を見込んでいる。

(飯田洋子)

(カナダ、日本)

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